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第二幕に入った「中国先富論劇場」 (2007年03月30日)

 北京で開催されていた、今年の全国人民代表大会(全人代)が3月16日に閉幕しました。今年の全人代の大きなテーマは、「民生問題の改善」と「社会公平・正義の維持」でした。

 「民生問題の改善」の具体策としては、農業、農村、農民のいわゆる「三農問題」解決のための財政支出を、前年比さらに15%増加させ、農村の医療、教育、社会保障などに充てることにしました。また、土地の強制収用、立ち退き問題や、環境汚染問題についての対策も徹底することにしました。

 「社会公平・正義の維持」については、都市と農村、地域間の発展不均衡の是正、個々人の収入格差の是正、共産党幹部による職権乱用や汚職の根絶、などが重点項目として挙げられました。

 その一方で2007年の経済成長目標は8%と、2006年の実績10.7%と比べてかなり低めに設定、「経済成長重視路線」から「国内安定重視路線」への明らかな路線の変更が図られました。

 中国全体を同じ速度で豊かにするのは無理だと悟った鄧小平が、「先冨論」に基づく改革開放政策を始めてから28年。「中国先富論劇場」はようやく「先に豊かになれる者から豊かになれ」という第一幕から、「豊かになった者の冨を、貧しい者に分配せよ」と題された第二幕に入ったようです。

 こう言うと、中国共産党の現執行部が鄧小平の遺志を継いで、満を持して第二幕に入ったように聞こえますが、実際は民衆の不満が爆発するのを防ぐために「第二幕に入らざるを得なかった」というのが正しいのかもしれません。

 何しろ今の中国共産党にとっては、人民のみなさんから「共産党はもういらないよ」と言われるのが何よりも怖いので、へたな民主主義国家よりも、より強く民意を意識した政権運営が行われています。

 以前、国内経済が資本主義化する中で、共産党政権の正当性を維持するために「社会主義市場経済」という矛盾をはらんだ造語を作って、世界の失笑を買った中国。今度は「一党独裁民主主義」なんていう造語が出てくるのかもしれません。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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