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史上最強の居座り夫婦 (2007年04月30日)

  先日、中国の重慶市で、不動産開発業者の立ち退き要求に抵抗し続けていた夫婦が、地元裁判所の調停で和解に応じ、別の場所に移るとした協定書に署名、4年越しの立ち退きをめぐる戦いにようやく終止符が打たれました。

 この夫婦が住んでいた地域は元々古い家屋が並んでいたのですが、政府による再開発決定に伴い、2004年に立ち退きが始まりました。

 不動産開発業者は夫婦に350万元(5,250万円)の立ち退き料を提示しましたが夫婦は拒否、隣家が立ち退いていく中でがんとして居座り続けました。

 今年3月に、全人代で私有財産の不可侵を明記した「物権法」が採択されると、夫婦は家の外に「国民の合法的な私有財産は侵してはいけない」などの張り紙をして、抵抗を続けました。

 これに対し不動産開発業者は、既に立ち退きが完了した周辺の土地を10メートルも掘り下げ、夫婦の家を「陸の孤島化」しましたが、そんな嫌がらせにも夫婦は屈さず、国内メディアは「史上最強の居座り事件」として大々的に報道しました。

 その後、裁判所が夫婦に対して立ち退きを勧告、期限までに立ち退かなければ法に基づき強制的に退去させると通告し、最終的に夫婦が不動産開発業者の建設した店舗兼住宅の提供を受ける、ということで和解が成立しました。

 それにしても350万元と言えば、中国ならば一生遊んで暮らせる金額。夫婦はそれを蹴ってまで、どうしてその土地に固執したのか。また、周辺の土地を10メートルも掘り下げられたとき、通勤や買物はどうしたのか。縄ばしごでも使ったのか。そう考えていくとこの事件、「史上最強の居座り夫婦」という一本の映画が撮れそうなぐらい、おもしろくてドラマチックです。

 私はこの事件の報道を聞いて、「中国も変わったなぁ」と思いました。10年前にこんなことをしたら、夫婦は人知れずどこかに連れ去られてしまい、マスコミなどには一切報道されることなく、淡々と開発が進んだのではないかと思います。

 アメリカは「人権がない、自由がない」と中国を非難し続けています。しかし、中国はゆっくりとではありますが、確実に変わりつつあるのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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