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中国が「世界の工場」でなくなる日 (2007年06月29日)
「世界の工場」と呼ばれて久しい中国。その安い労働力を武器に、世界の市場を席捲してきましたが、いよいよ、その呼び名を返上しなければならない日が間近に迫ってきているようです。
中国の安い労働力の供給元は、内陸の農村の余剰労働力でした。以前はその数2億人と言われ、沿海部でいくら工場が増えようが、内陸からいくらでも出稼ぎ労働者が出てくるので、賃金は上がらない、と信じられてきました。 しかし、数年前から西部大開発政策で農村にも職が増えたことや農業税の廃止などで、沿海部から農村にUターンする出稼ぎ労働者が増え、広東省などを中心に労働者不足が顕著になり始めました。 今回、中国社会科学院が発表した報告によれば、40歳以下の農村余剰労働力は現在わずか5,512万人であり、早ければ2年後には中国の労働力は供給過剰の状態から供給不足に転ずるのだそうです。 そして、広東省など沿海部で始まった労働者不足は、次第に中部地域へ、さらには内陸部への広がりつつある、とのことです。 そう言われてみれば当社の引越子会社・外運華通も、業容の拡大に伴って引越作業員を増員すべく採用活動を続けていますが、なかなか人が採れずに困っているのが現状です。 今後、中国の労働力が不足に転じることになれば、労働者の取り合いが発生し、労働コストが急激に上昇していくことが予想されます。そこに年間5%前後の元高が加われば、中国で生産された製品の輸出競争力はどんどん低下し、中国に工場を建設した外国企業も、どこか他の国に工場を移設する必要に迫られるかもしれません。 もっと労賃の安い国が「二代目・世界の工場」として中国に取って代わる日が来るのも、そう遠くないのではないでしょうか。 |
コラムニスト | 柳田 洋 |
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最終更新日 | 2012-04-27 |