コラムの詳細
東南アジア諸国はインド文化… (2007年08月29日)
東南アジア諸国はインド文化とアラビア文化に大きく影響されてきた国々ばかりだが、ベトナムは例外である。ベトナムは韓国や日本と同様、中華文化が深く刻み込まれている国なのだ。
それはベトナムが始皇帝の時代より中国王朝の支配を受け、その文化が深く浸透したからであろう。現在の浙江省紹興一帯を支配した越の末裔が、民族のルーツとの説もある。 ベトナムで科挙が廃止されたのは1919年、漢字が一般的に使用されなくなり、17世紀にカトリックのフランス宣教師が考案したローマ字表記「クォックグー」が普及し始めたのは1945年、阮朝が滅亡してベトナム民主共和国が建国されてからのことである。 しかし、本から漢字が消えても漢語までが消えたわけではない。現代語をみても、辞書に登録されている単語の7割以上が「漢字語」である。中国人が、ベトナム語が分からなくともベトナム人の話に中国語の単語がたくさん含まれていることにすぐ気付くのはそのためである。 そういった歴史的な経緯の中で自然に、ベトナムにはたくさんの華僑も昔から生活するようになった。全人口(約8,312万人)の1.3%と少数ではあるが、近年経済活動が活発化しており、特に越中貿易の分野では重要な役割を果たしている。 ベトナム最大の都市ホーチミン(サイゴン)には「チョロン地区」と呼ばれる世界最大のチャイナタウンがある。清の時代より断続的に、中国南部(主に広東、広西、雲南)から移り住んだ中国人が作り上げた町であるが、現在ベトナム華僑の約半分、50万人がここで暮らしているという。バスから降りると、中国語で書かれた看板が方々に見られ、商店から広東や香港で現在流行っている歌が流れてくることで、一瞬中国南方の町に入ったように錯覚した。 ホーチミン市内を案内してくれたガイドのリー君もチョロン生まれ育ちの華僑三世である。ホーチミン市国家大学日本語科卒業後、旅行会社に就職したリー君は、社命で日本に留学した経験もあるため流暢な日本語を操るが、中国語は片言しか喋れない。 「最近中国人観光客が増えており、中国語ガイドの仕事が非常に多くなっている。中国留学に行って中国語をしっかり勉強したい」と、中国旅行社の旗を先頭に統一会堂(旧南ベトナム大統領府)前を通った団体旅行の中国人を見送りながらリー君は言った。 |
コラムニスト | 文 彬 |
![]() |
参照URL | ||
最終更新日 | 2011-08-20 |