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TCL、コンピュータ事業を「売る」か「残す」か (2008年09月03日)

 TCLは、今後どのように発展していくのだろうか。看板事業である家電部門を強化していくのか、それとも誘惑の多いドロ沼:PC事業で冒険を続けるのか?

 さきごろ、TCL社はコンピュータ業務の今後の戦略について、インターネット上で声明を発表した。その中で、コンピュータ事業展開の決意はこれまでと変わっておらず、これこそが自社の核となり今後の発展につながるとの考えを示している。今回の声明は、業界では次のように受け止められたようだ:世間を騒がせたTCLコンピュータの分社化上場や、多くのPCメーカーによるTCLコンピュータの買収計画、楊偉強のTCLコンピュータからの退職騒動などはすでに収束し、TCLのPC業務続投の意思は依然としてゆるぎない。

 TCLは家電事業で作り上げた強いブランド力と市場影響力をよりどころに、PC部門に参入してきた。今、TCLはどのように足場を固めてPC部門での発展を狙っていくのか?我々はTCLの今後に不安を感じざるをえない。看板の家電部門を強化していくのか、それとも誘惑の多いドロ沼:PC事業で冒険を続けていくのか?動向が注目される。

 ゼロックス成長期中の企業戦略の失敗事例を見ると、TCL等中国企業が戦略を決める上で参考となる点を挙げることができる。1959年、ゼロックスは最初の自動コピー機「ゼロックス914」を発表。1968年には10億ドルもの営業収入を得ており、これは当時大変な数字だった。1970年、コンピュータとオフィスオートメーション部門への参入を宣言。しかし1985年には、コンピュータとオフィスオートメーション分野で数十億ドルの損失を出し、好転する気配が少しもないまま、ついにコピー機分野での地位も失う、という混乱状態に陥った。当時、ゼロックスは戦略上のミスを十分意識してはいたものの新戦略に対する公平な判断ができなかったため、結果ヒューレット・パッカードに先を越され、レーザー・プリンター市場は同社の独占状態となった。ゼロックスはコンピュータとオフィスオートメーション分野で失敗に終わっただけではなく、コピー機分野の主導的地位も奪われることとなった。レーザー・プリンターはもともとゼロックスの発明で、ヒューレット・パッカードより7年も先に発売する、といった好機を生かすことができなかったのだ。

 現在のTCLはゼロックスの1985年と同様、戦略の取捨選択という難局に直面している。戦略とは、競争の中において取捨選択されるものである。その本質は「しない事」を選択するものであり、取捨がないなら選択の必要、戦略制定も不要となるのである。私は、原点に戻って戦略の取捨選択を行わなければならないと考える。TCLの原点とは、競争力の高い家電等業務であり、それこそが李東生が富を築いてきた原動力なのだ。TCL社が、経営不振で資金援助が必要になった場合、どのようにコンピュータ業務を展開していくのかということは熟慮すべき問題である。


コラムニスト CCID Ccid
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最終更新日 2012-11-14

 

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