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中国経済という名の暴れ馬 (2007年11月30日)

 年間5%前後の元高誘導、輸出税還付の廃止など、中国政府は輸出を抑制するべく様々な政策を打ち出していますが、その努力もむなしく中国の輸出は増加を続け、今年9月末時点での外貨準備高は1兆4,336億米ドルと、日本の1.5倍以上の水準まで膨れ上がってしまいました。

 中国では「輸出で受け取った外貨は全て国庫に納め、輸出企業は輸出代金を全額人民元で受け取る」という、国家が外貨を集中的に管理する制度が採られていますので、輸出の増加は、市中に出回る人民元の増加にストレートな影響を及ぼします。

 これが中国国内でインフレを引き起こし、今年9月の消費者物価指数の伸び率は前年比6.2%、食品に関しては16.9%、食肉に絞れば43.0%の大幅な上昇となっており、一般庶民の生活を圧迫しています。

 これ以上の物価上昇が続けば、生活が苦しくなった一般庶民が反政府暴動を起こす可能性もなきにしもあらずですので、中国政府はインフレを沈静化するべく、今年に入って5回の利上げ、9回の預金準備率引き上げで、市中の人民元を吸い上げようとしていますが、通貨供給量はなかなか減らず、今年9月末時点の通貨供給量(M2)は39兆3,100億元(約629兆円)と、1年前と比べて20%弱も増加してしまいました。

 中国国内であふれかえっている人民元は海外に出ることができませんので、国内の不動産や株式市場に大量に流れ込み、相場を高騰させています。こうした市場の過熱を抑えるために、中国政府は様々な投資抑制政策を打ち出しており、株式市場は11月に入ってから、
いくぶん落ち着きを取り戻していますが、不動産に関しては、相場上昇の勢いが衰える気配はありません。

 中国経済の現状をまとめるとこんな感じでしょうか。

 普通の国は輸出を増やして外貨準備高を積み増したり、投資を促進して景気を浮揚させたりするのにたいへんな苦労をしているのですが、中国は逆に、暴れ馬のような経済の勢いを落ち着かせるのに頭を悩ませています。

 この悩み、ぜいたくと言えばぜいたくですが、手綱の引き方を一つ間違えれば、馬自体が死んでしまう、という可能性もありますので、中国政府も必死です。

 中国政府は中国経済という名の暴れ馬を殺さずに落ち着かせる、という難しい手綱さばきを迫られているのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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