WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

コンシューマエレクトロニクス (2008年09月03日)

~実用化が期待されるモーター制御MCU~

 現在、世界のエネルギーは日々減少しているが、一方でエネルギー需要は3%の伸びで増加している。そのため、エネルギー利用の制限や効率化が今後、人類が発展していく上での重要課題となっている。中国の現状を見ると、年間1人当たりの電力使用量は、世界平均レベルの1/3に過ぎないものの、依然として世界最大の電力消費国の1つであり、経済の持続的発展に伴い、中国の電力使用量は急激に伸び、1991年~2000年の10年間で倍増した。この速度で増加し続けると、2020年までに中国の電力使用量は33,700億度を超え、現在の世界の電力使用量の2倍くにまで達すると見られる。

 このような深刻なエネルギー情勢に直面して、電力消費に直結する実用化分野の一つであるモーターの高効率化や省エネ化が今後の課題となるであろう。モーターのIC制御が、市場での新たなホットイシューとなり、大手半導体メーカー各社は、川下市場に高い関心を示し、次々と新製品を発表することにより、市場競争で先制しようと狙うだろう。

 現在、モーター制御によるIC製品は3種類に大別される。

 それは、モーター制御専用チップ、モーター制御MCU(マイクロコントローラ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)だ。モーター制御ICの性能や実用化の現状を見ると、モーター制御専用ICは消費電力の小さいローエンド実用化分野で優位性があり、市場シェアが大きく、使いやすく、開発サイクルが短いなどの特徴がある。しかし、システム設計の柔軟性や性能などの面で制限を受けることが多いため、専用チップはモータ制御が普及した初期段階では優れていたが、現在ではすでにトレンドから外れた。

 専用チップ登場後、モーター制御の実用化やシステム機能に対するニーズが高まるにつれ、IC技術の発展によりDSPやMCUの低コスト化が迅速に実現されたため、従来はコスト高がネックとなって高性能制御が不可能とされたケースでもMCUとDSPを投入できるようになった。製品特性から見ると、モーター制御MCUはI/Oインタフェースの数量とプログラミングメモリーのサイズに重点が置かれており、DSPは高速演算に優れている。DSPはMCUよりも優れた信号処理構造になっている。DSPは、ソフトプログラミングを通じて、付加変数機能とアルゴリズムなど高効率かつ高級制御プロセスが可能だが、DSPのアルゴリズムは複雑で把握しにくい。

 近年、モーター制御の実用化分野が拡大しているが、DSP製品の価格は相対的に高く、MCU製品の性能が迅速に向上した状況下では、MCUはミドル・ローエンドのモーター制御分野の期待の星となり、その市場規模も急速に拡大している。2006年、中国モーター制御MCU市場は35.9%増という急激な伸びを示し、売上額は100億元を突破した。


 現在、中国モーター制御MCU市場において、コンシューマエレクトロニクス、工業制御、カーエレクトロニクスは、最も主要な3種類の細分化した実用化分野である。中でも、工業分野は、モーター制御に対するニーズが最も早くからあり、主に各種NC工作機械、工業設備、加工機械などの製品に実用化が集中しており、しかも過去数年で、工業制御がモーター制御MCU市場シェアの80%以上を占めた。相対的に成熟した実用化分野の一つとして、工業類モーター制御MCU市場は安定成長段階にある。今後数年、この市場は22%-24%の成長率を保つと見られる。
 
 今後数年の発展について見ると、同市場の成長を促す原動力はコンシューマエレクトロニクス製品であり、工業制御をすぐに追い越して、市場での主な実用化分野となるだろう。コンシューマエレクトロニクスがモーター制御分野で伸びると予測される主な要因は下記の通りだ。まず、国家が省エネ社会の確立を積極的に提唱しており、かつ、省エネ家電分野での取り組みを実施し、省エネ家電の普及を煽っていること。もう一点は、省エネトレンドに対応するため、家電メーカーは製品の省電力化、低放射、低騒音というニーズの下で製造活動を行っており、高効率モーター制御のニーズが大幅に増加し、DSPやMCUによるモーター制御分野で相応の機能が実用化されるだろう。家電市場の戦争は厳しく、製造メーカーは川上IC製品のコストを非常に気にしており、価格面で安いMCUにはこの分野での強い競争力がある。

 現在、我が国の省エネ家電市場の全体レベルは低く、省エネ技術の実用化や市場の喫緊のニーズを大々的に開拓する必要がある。現在、モーター制御MCUは家電分野では主に白物家電で実用化が進んでおり、例えばインバーター・エアコン、インバーター・冷蔵庫、インバーター・洗濯機などがある。省エネ技術が中国家電製造業で実用化されるにつれ、世界の家電生産基地・中国でのモーター制御MCUニーズの潜在力は莫大であると予測される。2007年~2011年にかけて、同市場の年間成長率は25%以上を保ち、中国モーター制御MCU市場の成長を牽引する巨大な原動力となるだろう。


  • 発行者:賽迪顧問股份有限公司(CCID)半導体産業研究センター 副総経理 宋宇

  • データ:同上、2007年09月

  • 邦訳者:日中ビジネス推進フォーラム(WJCF) 金絲猴

  • 著作権:全てCCID日本事務所に帰属します。無断転載を堅く禁じます。

コラムニスト CCID Ccid
参照URL
最終更新日 2012-11-14

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧