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世界銀行の主導で行われている国際比較プログラ… (2008年01月05日)
世界銀行の主導で行われている国際比較プログラム(ICP - International Comparison Program)は、各国通貨の購買力平価を算定しGDPの実質比較を目的とした世界で最も大掛かりな統計事業の一つである。
昨年12月17日、世銀が新しいICPレポートを発表した。このレポートは146カ国が網羅されていたことと、中国も初めて参加したことで関心を集めた。ところが、新しい統計ツールを導入したICPレポートは世界経済が過去に行った統計よりも小さかったと表明された。中でも中国の経済総量(Total value of all goods and services)は40%もの過大評価であったようである。 欧米による人民元の引き上げ圧力が年々高まっている背景には、人民元が過小評価されているという見方があるが、ICPレポートが正しければ、中国も関係国も新しい年に人民元の真価を見直さなければならなくなる。 それにしても、2007年は中国経済にとっては象徴的な一年であった。 通年のGDP成長率が11.5%と予測され依然高成長が続き、貿易黒字は2,600億米ドルと過去最大になる見込みである。また、中国政府や企業の海外投資が初めて海外からの投資を上回り、290億米ドル以上になったのも2007年である。一方で、株市場は過去に類を見ない暴騰振りであり(上海Aは最高6429.680ポイントを記録した)、インフレーションも11月に11年ぶりの高水準に達して様々なリスクが増大してきた。 ![]() そして、五輪のある2008年も、前年度よりわずかに下がるものの10.5%には達すると政府の経済ブレーンでもある中国人民大学経済研究所は予測しているが、グローバリゼーションが進む中で世界全体の不透明な景気に左右される可能性が大きくなり、格差問題を初めとする国内の社会不安要因も一層顕在化するに違いない。 2008年は「長距離走者の年」だという人がいる。大きな目標に向かって、時には喘ぎながら、一歩一歩着実なストライドで走り続ける年だという。「和諧社会」(調和の取れた社会)という言葉は、胡錦涛第二期政権が昨秋の中国共産党17回大会で打ち出した新しい国家像を示すものであるが、2008年は過去30年の「社会主義市場経済」がもたらした様々な歪みを矯正する年にもなりそうである。 |
コラムニスト | 文 彬 |
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最終更新日 | 2011-08-20 |