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中国人は本当に交渉上手なのか? (2008年02月01日)

 中国人はよく交渉上手と言われます。しかし、本当にそうなのでしょうか。私の経験からすれば、中国の人たちは交渉が上手というよりは、無意識なのか意識的なのかはわかりませんが、交渉事の本質を見抜いている人が多いため、結果として交渉に勝ってしまうのではないか、と思います。

 中国に来るまでは私も交渉は交渉中のものの言い方や態度などの交渉技術で成否が決まると思っていました。このため、巷にたくさん出ている交渉術の本なども読んでいたのですが、中国に来て「結論は交渉前にほぼ決まっている」ということをイヤというほど思い知りました。中国では交渉とは「相手がこちらより立場が上だと勘違いしている場合に、「あんた勘違いしてるよ」ということを相手に教えてあげるための場」に過ぎないのです。

 中国の交渉でも事実の確認をしてお互いが共通認識を持つための作業はなされます。普通はそれで交渉成立、となるのですが、それでも双方の主張に隔たりがあり合意に至らない場合は、「では、この交渉が決裂した場合、どちらがより困るんですか」という話になります。そしてより困る方が譲歩をして、交渉を成立させることになります。

 ですから、中国の人たちは交渉に臨むに当たって、当然、交渉決裂も選択肢の1つとして用意して行きますし、交渉が決裂しても困らないように自分の立場を有利にする最大限の努力をした上で交渉に臨みます。交渉では最終的には、立場が上で交渉が決裂しても困らない人の意見が通り、立場が下で交渉が決裂しては困る人は妥協せざるを得ないのです。

 このため、日本の本社から「かならず交渉を成立させてこい!」などと言われて中国企業と交渉をする日本人駐在員は、交渉が始まる前に既に負けているのです。

 これは孫子の兵法にも通じるところがあります。交渉の場という戦場でいかに勇敢に戦うかよりも、交渉前に相手の事情を調べて相手の弱みを握ったり、兵や兵糧を蓄えて自分の立場を有利にした上で交渉に臨むことの方が、交渉という戦争で勝利を確実にするためにはよっぽど重要なことなのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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