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初めての「スタグフレーション」 (2008年02月25日)

 2月初旬、中国の主要エコノミストが出席した経済フォーラムが北京で開催されたのですが、そのフォーラムで頻出した単語が「スタグフレーション(景気停滞下でのインフレ)」だったのだそうです。

 ちなみに、「スタグフレーション」は中国語では「停滞性膨張(てぃんじーしんぱんじゃん)」と言います。景気が「停滞(スタグレーション)」しているのに、「通貨膨張(インフレーション)」するのでこう呼ぶようです。

 「スタグフレーション」は1973年の第一次石油ショックの時に発生し、西側諸国の経済政策担当者を大いに悩ませましたが、その際に中国の経済の教科書には「資本主義の解明できない欠陥」という表現で説明がなされたそうです。当時の中国政府は「ほら見ろ、だから資本主義はダメなんだ!」と、鬼の首を取ったように喜んでいたのではないかと思います。

 しかし、その「資本主義の解明できない欠陥」がたった35年後の中国を悩ますことになるとは、毛主席も夢にも思わなかったのではないでしょうか。

 中国は過去何年もの間「低インフレ下での高度経済成長」という最高の状態を続けてきましたが、ここへ来て昨年からのインフレ、そして、今年はインフレに加えて景気も停滞する「スタグフレーション」という最悪の状態になる可能性が出てきてしまいました。

 「スタグフレーション」の状態に入ってしまうと、中央銀行である中国人民銀行は打つ手がなくなってしまいます。

 インフレを抑えるために金利を上げ続ければ、景気を更に失速させ、景気の失速により発生した大量の失業者の怒りの矛先が中国政府に向かうことになりかねません。

 逆に、景気を浮揚させるために金利を下げれば、市中に出回る人民元が増加しインフレが更に加速、物価高で生活が苦しくなった一般庶民の怒りの矛先が中国政府に向かう、という可能性もあります。

 資本主義国家になったばかりの中国が初めて経験する「スタグフレーション」。35年前に一足先に経験した西側諸国の対応をお手本に、この難しい局面を乗り切れるかどうかが、中国の今後の安定に大きな影響を及ぼすのでないか、と思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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