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管理職の人事異動とリストラ (2008年09月03日)

~アリババの戦略、実施段階へ~

 年始、アリババは会社再編、管理職の人事異動と中国ヤフーの社員削減を宣言、同社がすでに戦略実施段階に入っていることを示した。

 アリババの発展において、馬雲が最も重視したのは使命、価値と戦略目標だ。アリババの使命とは“この世になし得ないビジネスはない”ということであり、アリババがずっと受け継いできている“チームで協力、教育によって師弟共に向上、品質・簡易・情熱・開放・イノベーション・集中・サービスと尊重”といった価値観は、インターネット社会の方向性にも合うため、多くの電子商取引の人材を獲得してきた。その戦略目標は更に大きく、株主に向けた上場宣言の中で、“完全な電子商取引産業チェーンを創立、整備し、中国人によるグローバル企業を目指す”ことを再び約束した。上場以降、アリババは発展に必要な資金を獲得、持続的発展を遂げる奨励体制などの課題を解決してきている。次は、戦略目標の本格的な実施段階に入り、様々な課題に挑んで行くことになるのである。

 グローバル化した電子商取引運営システムを構築する中でアリババは、コアとなる更に安定した強大な電子商取引インフラ構築を必要としている。電子商取引インフラはアリババ電子商取引のエンジンとなるため、取引規模の急速な拡大過程において、その業務がより信頼感、安定感を増し、スムーズに運営できることを目指している。そして、異なる業務モードを統合して、業務革新に適応する。インフラはアリババの未来投資の重要な部分であり、これもアリババに巨大な投資収益をもたらすだろう。

 飛躍的発展を遂げるためには、アリババの戦略重点を明確にしなければならない。電子商取引チェーンを構築する中で、アリババは自社に合った業務発展計画を考える必要がある。B2B業務では、業務規模を拡大するか、それとも業務構造を最適化するかが重要であり、B2C業務に関しては、業務規模を拡大するか、それとも利潤向上能力を高めるかが重要である。市場開拓に関しては、新しい海外市場を開拓するか、それとも従来の市場を深く開発するか?戦略選択に関しては、産業チェーン周辺の資源整合を行うか、それとも新業務を開発するか?がそれぞれ重点となる。アリババの業務構造から見て、現在の戦略ポイントはB2BとB2C電子商取引の業務規模の急速な拡大、海外進出業務の推進、プラットフォーム資源の強化と整備にある。アリババの産業チェーンの中では、ヤフー中国のサーチ業務は市場規模および顧客獲得の面において、目標を達成しておらず、アリババの業務収入と利潤に貢献するに至ってはいない。つまりヤフーのサーチ業務による収益と利潤獲得がまだできておらず、ヤフー中国の再編成をせざるを得ないのである。2007年12月、中国ヤフーは従来の新メディア、サーチ、通信三つの事業部を廃止し、新たにウェブサイト運営部、メールボックス運営部を創設した。サーチ業務と電子商取引を融合し、業務の潜在価値を開発していくことが、今後のヤフー中国発展へのポイントである。電子商取引のサーチ技術の研究開発に重点をおくことから、これも利潤中心からコスト中心へ、サーチ業務の移行が可能となる。

 「統合」は次の段階での、アリババのもう一つの重点である。アリババ電子商取引チェーンは情報フロー、資金フロー、物流を一体化したものであり、主要な取引先は全世界に散在している中小企業と個人を含むいわゆる“ロングテール”で、サービス・モードにはB2B、B2Cなども含まれる。戦略の重点は統合であり、グローバルな視点で見ると、地区資源の統合が、産業チェーンの視点では業務資源の統合が必要となるのである。また、多様な取引先、多様な業務の価値を融合させることも必須だ。グループサーチ技術研究開発センター、グループP4P(検索連動型広告)運営センターとグループメディア販売センターを設立するのは、「整合」の考えの下であり、これら業務のB2BとB2C業務に対する共通価値を高めるためである。

 新戦略の実施には、新たな能力が求められる。グローバル企業には、世界レベルの指導力と企業家の精神が必要なので、馬雲と彼の経営陣にはグローバルな視野と戦略の展望が要求される。またグローバル企業では、国際化の運営経験及び全世界価値の運営経験、各国ビジネスの環境と法律の把握なども必要である。これは、若いアリババのインターネット従業員の情熱と技術能力でできるものではなく、一層規範化、基準化した顧客中心のサービス能力の向上が必要となるのだ。アリババはまた、もう一つの投資をスタートさせた――管理職の教育・調整といった人事戦略を実施して、戦略に適した人材を昇格させ、適さない人材は教育、育成し、リストラも行う。2007年12月、アリババグループは傘下の管理職を対象に上場以降、以下のような調整を行うことを発表した。もとヤフー中国の曾鳴をグループ本部に復帰させ、「支付宝」総裁の陸兆禧を淘宝網の総裁に、グループの金建杭副総裁を中国ヤフーの総裁に、淘宝網副総裁の邵暁鋒を「支付宝」会社の執行総裁に、ヤフー・サーチの張憶芬をグループP4P運営センターの副総裁においた。淘宝網総裁の孫彤宇、グループCOO李琪、グループCTO呉炯、グループ名誉副総裁の李旭暉を解任し、研修をさせる。2008年1月24日、アリババはヤフー中国社員を100名削減することを再度発表した。人材と企業文化は、発展戦略に適応しなければならない。今回の大規模な人事異動から、アリババの世界一流への意気込みが伺える。

 このように効果的な戦略実施は、3年の内に市場価値が1000億ドルの企業、10年以内に世界インターネットのTOP3入りを目指す、というアリババの夢を実現させる可能性がある。


コラムニスト CCID Ccid
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最終更新日 2012-11-14

 

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