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上場会社の株券奨励制度 (2008年09月03日)

~実情に適した選択を~

 2007年、賽迪顧問(CCID)が国内の上場企業を対象に行った調査によると、株券による奨励制度(株券奨励制度)を実施しているか、または実施の意思のある企業は約52%を占め、中でもハイテク企業が多く見られる。しかし、国内上場企業の発展状況から見ても、当制度を実施している企業はまだ少ないのが現状だ。賽迪顧問は、上場企業の株券奨励制度に対する制限要因を以下の通りにまとめた。

 1、株式市場の発展に従い、株券奨励による権力行使空間が縮小
 2006年から、国内A株市場の平均上げ幅は250%に達しており、いまだかつてないブルマーケットに突入した。現在、8割近くの上場企業の株価は倍増、数十倍も増加した企業もあるほどだ。会社の株価が比較的高いと、持株の権力行使による利益はすでに非常に小さくなってしまうため、一部の上場企業の管理者は株券奨励制度には消極的である。

 2、従業員長期奨励に対する企業の重視度は低い。
 当該調査によると、勤務している会社に社員向けの長期奨励体制が整備されていないケースは34%。これらの上場企業にとって、長期奨励体制不足により株券奨励制度への重視度が下がると、言うまでもなく実施はされない。

 3、伝統業界での人材競争は少なく、株券奨励制度実施の促進力不足。
 ハイテク企業、紡織、機械など伝統業種の上場企業の人材は比較的安定しており、企業は株券奨励制度よりも、福利などの保障に力を入れている。

 4、一部の国有上場企業の株券奨励計画は上級主管機関の制限を受ける。
 当該調査によると、一部の国有上場企業の管理者は、上級主管機関の株券奨励計画に対する審査が比較的厳しく、それが制度の実施を制限していると強調している。「株権分置」改革に伴い、国有上場企業の株券奨励制度の実施環境は、良くなる見通し。

 5、一部の民間企業経営者は、株券奨励制度が大株主の権益を下げるのではないかと懸念。
 ここ数年、用友などの民間企業のトップは、自社の株式によって企業管理職と技術幹部を奨励した。但し、一部の民間企業経営者は、このような制度が大株主の権益を減少させ、大株主は企業に対する決定権と制御権を失うのではないかと心配している。

 6、参考になる実例は少ない。
 株券による奨励制度は90年代後期に我が国に導入されたことから、現在、成功実績は比較的少ない。調査の中で、いくつかの上場企業の管理者もこのような心配を示しており、これは一部の企業が同制度に対して様子見の態度をとる原因にもなっている。

 上記の解説から、上場企業の株券奨励制度への不十分な認識が、同制度を制限する大きな要因であることがわかる。賽迪顧問は、国内外企業で行われている株券による奨励の最新形式及びその特長を次の通りに紹介する:


 上記は主に管理職に適用されるが、もちろん中級・高級管理職及び業務中堅、技術中堅、全社員に適用される場合もある。賽迪顧問は、具体的な実践の中で、企業は社内外の環境条件及び奨励の対象、また各種の株券奨励ツールの特長に応じて、企業に有効な奨励方法あるいは各種株券奨励手段を組み合わせることにより、グループにとって最適な株券奨励形式を採用するべきだと考える。

 企業の株券による奨励案の設計
 企業株券奨励の主な目的は、企業の管理者、キーとなる従業員、その他の従業員に対する中長期制約体制を整備し、奨励対象の利益と株主の価値を密に結び付け、奨励対象の行為と社内戦略目標を一致させて、企業の持続可能な発展を促進することである。賽迪顧問は、株券奨励形式を選ぶ以外に、企業は科学的かつ合理的な株券奨励案を設計して初めて、上記目的を達成することができるだろうと考えている。

 1、株券奨励対象の確定根拠と範囲の決定。
 企業の経営規模、人材競争の度合及び会社の成長段階によって、株券奨励の実施効果は異なる。例えば、草創期あるいは高速成長期にある企業にとって、株券奨励範囲を全社員へと広げることができる。これによって、人材の招致、人材と企業の財政圧力間の対立を解決することができるとともに、企業の発展への関心度を高めることができる。また成熟期にある企業にとっての長期奨励は、経営陣に重点を置くべきである。

 2、実績をもとに株券配分システムを構築する。
 従業員の給料と実績考課の中で、企業が役職、各部署に応じた実績賞与の割合を設定することで、より効果的な奨励手段となる。株券配分は、科学的かつ合理的な配分制度を整備するべきで、各役職、各部署の従業員に応じた実績賞与の割合を設定することにより、責任、権力、義務それぞれのつながりを明らかにする。

 3、合理的な奨励対象の権力行使や撤退制約体制の整備。
 賽迪顧問の調査により、一部の上場企業や上場予定の企業における株券奨励制度の不完備が、企業の所有者権益に対する損害をもたらして、企業の発展と従業員間の団結に影響したことが明らかとなった。従って、企業は株券奨励計画を実施する時、合理的な奨励対象の権力行使や撤退制約体制を整備しなければならない。そうすれば効果が現れ、企業の利益を損なうようなことはないだろう。

 我が国では現在、超大手企業・中国石化が既に株券奨励計画を実施している。政策のさらなる開放に従って、この長期奨励体制を実施する企業が次第に多くなれば、会社の管理構造及び高級管理職の報酬構造の改善が可能になるのである。


コラムニスト CCID Ccid
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最終更新日 2012-11-14

 

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