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乱高下を繰り返す中国株と堅調な実体経済 (2008年05月09日)

 乱高下を繰り返す中国株の値段をよそに、中国の実体経済は非常に堅調です。

 中国の経済成長は内需主導ではなく、輸出と投資主導でしたので、サブプライムローン問題でリセッションに入ったアメリカ向けの輸出が減少し、今年は6年ぶりに経済成長率が10%を割り込むことが予想されています。日本では「中国の破竹の経済成長もここまでか」というような報道もされているようです。

 しかし、10%を割り込むと言っても、最も低い予想をしているイギリス・バークレイズキャピタルでさえその数字は8.8%。決して低い成長率ではありません。

 そして、3月の全人代で採決された今年の目標成長率はそれよりもさらに低い8%。

 景気の過熱を抑えて、ほどほどの経済成長を長期間にわたって続け、国内情勢の安定を図りたい中国政府にとっては、いろいろと小さな問題はあるにしても、大局から見れば理想的な状況に近づきつつある、といったところではないでしょうか。

 常識的に考えれば、中国の経済が1年間に10%前後成長する、ということは、中国企業全体が生み出す付加価値も10%前後上がる、ということですから、中国株の株価指数も毎年10%ぐらいずつ上がっていくのが本来のあり方だと思います。

 それが、1年で倍になったり、半年で半分になったりするわけですから、株式市場の参加者の人たちがいかに実体経済や各企業の本当の価値を見ずに、株価の上がり下がりだけを見て売り買いを繰り返しているかがわかります。

 特に、株式投資初心者の中国の人たちが参加者のほとんどを占めるA株の株価は上がり下がりが激しいです。

 昨年の中ごろぐらいまでは、株価は一本調子で上がっていましたので、「何しろ早く買わないと損だ!」ということで、全財産を投入したり、親兄弟からおカネを借りてまで投資したりする人が続出しました。

 それが昨年後半からは株価は一本調子で下がっていますので、逆に「何しろ早く売らないと損だ!」ということで、いわゆる「狼狽売り」をしている人が多いため、株価の下落が止まらないのではないでしょうか。

 ここ1年のA株市場の乱高下で、中国ではかなりの人が痛い目に遭っているものと思われます。「二度と株には手を出さない!」という人も多いでしょうが、これをきっかけに「実体経済の状況や各企業の本当の価値を研究してみよう」という方向に考える人が増えてくれば、中国の株式市場はより成熟し、実体経済を無視した株価の乱高下は少なくなってくるのではないか、と私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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