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四川省大地震に見る中国経済のもろさ (2008年05月30日)

 さる5月12日(月)、中国四川省でマグニチュード8.0の大規模地震が発生、1000万人を超える方が被災しました。今回の地震で亡くなられた多くの方々には、心より哀悼の意を表します。

 この地震の揺れは、震源地から1500km離れたここ北京にも到達しました。

 揺れの大きさは、日本の震度で言えば1か2ぐらいのものですので、地震国・日本から来た私などは、揺れている間も平気で仕事を続けていたのですが、地震慣れしていない地元北京の人たちの多くは、慌てて外に避難したようです。

 私は北京に住んで12年になりますが、体感できる地震は今回が3回目。このほとんど地震がない土地に生まれ育った人たちにとって、普段から絶対に動かない存在だと思っていた地面が「揺れる」ということはとんでもなく恐ろしいことでしょうから、震度1か2の小さな揺れでも外に避難した人たちの気持ちは非常に良く理解できます。

 北京に限らず、中国は日本に比べれば、地震の発生が非常に少ないですので、「地震が来ないことを前提としたもろい建物」がたくさんあります。都会の高層ビルなどは、鉄骨を組むことが常識となっていますが、ちょっと田舎に行けばほとんどの建物はレンガで作られています。

 日本でも一時期、耐震強度の偽装が社会問題となりましたが、中国の建物の地震に対するもろさはそんなレベルではありません。中には、何人かで押したら倒れてしまうのではないか、と思われるような頼りない建物もあります。

 今回の四川省大地震は、世界的に見ても近年にない大規模な地震であったと言われていますが、それでも崩壊した建物の下敷きになって万人単位の死者が出るというのは、「地震が来ないことを前提としたもろい建物」が原因になっていることは否めません。

 中国は破竹の経済成長を続けてはいますが、その経済は自然災害が来ないことを前提として設計されています。このため、今年年初の大雪の時もそうでしたが、ひとたび大きな自然災害に遭うといとも簡単に経済がストップしてしまう危険性をはらんでいるのです。

 かと言って、12年に3回ぐらいしか来ない地震のために、中国の全ての建物の耐震強度を日本並みに上げようとすれば、社会の効率は極端に落ち、それこそ中国の経済は止まってしまうでしょう。そうなれば、地震よりもっと恐ろしい事態を招くのは、火を見るより明らかです。

 そういった意味では、全国規模で地震や台風など自然災害に対する対策を行いながらも、世界第2位の経済大国の座に留まっている日本という国はたいしたものなのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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