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中国自動車用電子機器市場分析(2007年) (2008年09月03日)

 一、自動車産業の継続的急成長 乗用車の成長は今年も好調
 2007年、中国の自動車産業は継続的急成長を遂げ、自動車生産台数は900万台弱に達し、昨年比22.6%増となった。


 2006年、中国の乗用車生産台数は、初めて全自動車の生産台数の50%の越えた。2007年、乗用車生産台数は高成長を維持し、前年比54.3%となった。乗用車の持続的高成長は主に国内の拡大しつつある市場ニーズによるものであり、高まる個人消費者の購買力が数年間にわたり乗用車市場を支えている。


 二、自動車電子市場の急成長
 自動車産業の急成長の中で、自動車生産台数も急速的に増え、自動車部品のグレードアップもテンポを速めている。これに従い、自動車電子市場の成長トレンドが止まらず、前年度の自動車電子製品の販売高は1,215.7億元に達し、前年比40%増加となっている。


 2007年の中国自動車電子市場の主な特徴は、以下の通りである。
 
 1.既存製品の普及が市場成長の主牽引力
 2007年の自動車市場を分析すると、新しい製品が登場したわけではなく、既存製品の普及と自動車台数の増加が市場成長の主な牽引力であるということがわかる。

 2007年、セミオートマチックトランスミッションの国産乗用車、SUV、MPV等における比率が50%以上となり、ABSの使用率は90%、エアバックの使用率は90%となっている。また、自動車車体用電装品や、電気制御部品の普及も持続的に普及して来ている。CDはテープレコーダーの次世代製品として需要量が多くなり、MP3機能の普及率も20%を超えている。国産車のグレードアップにより自動車電子製品も急ピッチで普及が促進し、2007年の自動車電子市場を拡大させてきたのである。

 2.自動車電子製品のコスト増
 2007年、値下げは中国乗用車市場のキーワードであった。また、直接値下げ以外、形を変えた値下げも普遍的であった。市場の中は、中、ローエンド車の競争が最も熾烈である。この分野での「電子競争」も激しくなり、製造メーカーは次々とハイレベル電装品の多い中、ローエンド車を打ち出し、自動車コストの中で自動車電子の割合を急拡大させてきたのである。

 現在、国産中級車の電装品装備率は国際レベルに達しており、中国製乗用車の方が電装品が多い傾向である。例えば2007年、江淮自動車の12万元前後の「賓悦」には消費者の欲しい電装品がすべて揃っていた。販売量の少ない国産中級車は直接中国の自動車電子市場に影響を与えることはないが、市場に与えたショックは自動車の電子化をヒートアップさせることになった。

 3.既存製品と技術応用は自動車電子製品の普及に貢献
 中国自動車産業の急成長は、「拿来主義」(外国のよいところを取り入れ身に付け、自国に役立てるという意。魯迅の言葉)による所が大きい。外資の導入により、中国自動車産業は技術的、生産能力上の不足を補うことが出来るため、大規模生産、製品のグレードアップを早く実現できたのである。

 グレードアップの過程で、国産自動車は成熟した技術を取り入れた製品を使えば良いし、外国ブランドの自動車メーカーにとっても、成熟したブランドを中国で量産すれば、グレードアップも順調に行なわれ、大掛かりな研究開発や試験を要さないばかりか、コア技術の研究開発はもちろん要らない。

 したがって、自動車電子製品電子製品の普及は市場ニーズによるものであり、市場ニーズさえあれば、相応の電子製品を装備した自動車がすぐ市場に出回ることになるといえる。これは近年中国自動車電子市場の持続的成長の内因でもある。言い換えれば、中国自動車産業において、自動車電子製品の装備率が相変わらず世界水準以下に留まるものの、更なる市場の開拓が期待できる。高度成長は潜在市場の現れである。

 2007年、中国自動車電子市場の中で、パワー制御、シャシー制御及びセキュリティシステム製品はそれぞれ31.7%、27.0%の市場シェアを占めている。2007年、国産車におけるEMS普及はほぼ完了し、製品に対するニーズは鈍化した。しかし、セミオートマチックトランスミッションの応用が大幅に拡大される。2006年において、ABS、EBD等の普及率がすでに高い水準にあったため、シャシー制御システムの製品グレードアップは2006年と比べて緩やかになった。この他、車載電子市場シェアが拡大した。これは主に車載オーディオ製品のグレードアップおよび車載GPS市場の拡大によるものである。


 製品の構成から見れば、EMSは依然として最大の市場シェアとなっているが、ニーズの縮小により市場シェアが下がりつつある。また、ABSとエアバックもシェアが下がっている。市場の成長は主に製品のグレードアップによるものなので、カーオーディオ市場の成長は全体市場の成長より遅れている。そのため、カーオーディオ市場シェアも降下している。一方、電子製品類が目まぐるしく更新されているため、自動車電子製品の比率が高成長を維持することができ、既に全体市場の1/5に接近しているのである。


 三、自動車電子産業の隆盛、需給バランス
 中国自動車電子産業は自動車産業と密接な関係にある。初期段階において、主な推進役は海外自動車部品製造メーカーの中国シフトであり、製品と生産能力は主に中国市場向けであったが、自動車製品に対するニーズが高まる中で、産業規模が拡大されてきた。また、数年を経て、一部の自動車電子製品は国内だけでなく、海外へも輸出するようになったため、産業自体は国内向けから海外向けの成長路線を辿るようになった。ここ数年、中国自動車電子産業の主な特徴は以下の通りである。

 1.自動車電子部品のローカリゼーションの加速。
 2005年に発表された《自動車特徴を構成する自動車部品の輸入に関する管理方法》第21条第三項によれば、輸入部品の総価格が自動車全体の60%以上であれば、自動車の特徴を構成することになり、25%の課税となる。このため、海外ブランドは自動車部品と電子製品のサプライチェーンを調整し、ローカリゼーションのニーズに応えなければならない。また、市場競争の激化により、メーカーも部品のローカリゼーションによる全体コスト削減を図らなければならないため、大手海外自動車部品メーカーと自動車電子メーカーは相次いで大陸に進出してきた。中国自動車電子産業はこのような産業シフトの中で高成長を続けてきたのである。

 従って、自動車産業の成長につれて、中国自動車電子産業の規模も徐々に拡大され、国産車の電子製品のローカル化比率も高まりつつある。特にフォルクスワーゲン、GM、トヨタ、ホンダ等、中国にいち早く進出したメーカーの動きが注目される。

 2.一部の部品の海外向け傾向が顕著に。
 中国は世界でも最大の電子製品製造センターであり、世界の携帯電話、DVD、NB、MP3の大半は中国で製造されたものである。これらの成熟した製品と比べ、中国自動車電子産業はまだ始まったばかりである。主な理由は自動車電子製品の供給バランスが取れており、コストプレッシャーも相対的に少ないからである。そのため大規模な“Made in china化”(輸出型)も遅れていた。また、産業形成の初期段階では、中国の内需への対応が主な目的であった。

 しかし、カーオーディオ、エアコン、セキュリティ機器、カーナビ等の分野ではローカル企業の進歩に従って、相対的に技術レベルの低かった自動車製品産業が急速に成長した。多くのローカル企業は、OEMをきっかけに参入し、外資企業も製造機能を中国にシフトしてきた。2007年、中国のカーオーディオの出荷台数は1,200万セット、車載GPS800万セット、自動車セキュリティ1,100万セットを超えた。その他の電子製品企業の成長から見て、近い将来、中国は世界の自動車電子製品製造センターの一つとなり、“Made in china化”を徐々に実現するだろう。

 四、中国自動車電子市場のトレンド分析
 1.市場トレンド:中国は世界の自動車製造センターになり、自動車電子市場も成長する。
 中国経済の成長と消費の拡大は紛れもない事実であり、中国は世界でも有数の自動車市場となっている。海外自動車メーカーのローカル化が進み、中国の自動車企業と市場も国際化が進んでいる。ここ数年来、中、ハイエンド乗用車は、“Made in china化”のテンポを速める中で、中国も徐々に高級車の一大潜在市場となりつつある。

 自動車産業の成長により、自動車電子市場も急成長してきた。国産車の輸出に伴って、関連する自動車電子製品市場も台頭してきている。
近い将来、数多くのハイエンド自動車電子製品が国産車に導入されることが予想できる。また、自動車メーカー間の電子製品分野における競争も激しくなるだろう。その中、国内企業は産業の成長および製品のバージョンアップ等にも重要な役割を担うことになる。したがって、海外メーカーは本当に競争力のある車種を打ち出さないと、中国市場では勝てないだろう。次なる市場競争の中で、自動車電子の役割が益々重要となり、中国自動車電子市場の直接の牽引力になるに違いない。

 2.製品トレンド:既存製品の普及から新製品の採用へ
 中国の自動車産業が後発組であり、自動車電子分野においても欧米・日本と比べて立ち遅れている。しかし、市場の拡大につれて、国産自動車製品の電子化が急速に成長している。また、主に世界でも普及している製品を導入していることもあり、自動車輸入が拡大する中で、中国の自動車電子市場は高成長を維持している。現在、パワー制御、シャシー制御、セキュリティシステム、車体電子制御等の製品の普及率は相当なレベルに達している。
 
 また、近い将来、これらの製品は徐々にローエンド車へ導入されることになる。これと同時に、メインパワーセキュリティシステム、自動車ネットワークシステム、GPS等のような新しい技術は中国自動車電子市場のニューフェースとなるだろう。新製品普及にあたり技術的な問題はなく、コストも徐々に下がっている。これから数年の間、法律法規の整備、消費者安全意識の高まり、快適を求める消費者のニーズ、関連ネットワークやサービスの増加に従って、新しい自動車電子製品が急速に普及されることになるだろう。これらの製品はEMS、ABSのように爆発的な売れ行きは期待できないだろうが、多様化製品の応用が更に中国自動車電子市場の成長に影響することは間違いないであろう。

 3.応用トレンド:車体、車載電子市場の潜在力が大きい
 初期段階では、自動車電子製品はパワー制御とセキュリティの分野に使用されていたが、自動車の役割の変化につれて、オーディオ、エアコンのように、快適度、娯楽度を高める製品が大量に導入されてきた。

 この先数年間、自動車は更に安全、更にエコになるトレンドは変わらず、高性能な電子製品のグレードアップも継続するであろう。ただ、車体、車載電子市場も大きくなると予測できる。

 車体、車載電子製品は種類が多く、潜在市場も大きい。パワーやシャシーシステムと比べ、種類が非常に多いため、車体、車載電子製品の拡大が更に期待できる。メディア技術やネットワーク技術等、多くの3C分野の応用技術はすべて自動車に導入することが可能である。

 そして、車体、車載電子製品は潜在ニーズであるため、両方とも自動車の快適度や娯楽度を高めるために大きな役割を果たすことになるだろう。一般消費者の増加に従い、自動車の動力以外に対する要望も徐々に大きくなるため、車体、車載電子製品市場は大きなポテンシャルを持つことになるのである。

 五、中国自動車電子市場規模の予測
 2008年および近い将来、中国自動車電子市場は自動車産業の成長や国産車のグレードアップの中で高度成長を維持すると予測される。2012年には、中国自動車電子市場規模は3,200億元になる見込みである。



 パワーとシャシーシステムの普及率はすでに高いため、その市場の成長は主に自動車出荷台数やグレードアップに依存し、成長速度も年平均成長率20%以下とやや緩やかになるだろう。これに対して車体や車載電子市場の成長は速いだろうと予測されている。この先5年間の年平均成長率は25%になる見込みである。
 
 製品の構成からみれば、GPS、TPMS等の車載電子製品市場が大きな成長が遂げ、市場規模は年平均30%を超えると予測されている。しかし、EMS、ABS、メーター類、エアコン等従来の自動車電子製品はすでに普及率が高いため、市場ニーズが下がり、市場規模も緩やかな成長期に入るとみられている。



コラムニスト CCID Ccid
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最終更新日 2012-11-14

 

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