WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

テレビ付き携帯、期待に応えられるか (2008年09月03日)

 現在、中国のテレビ付き携帯電話産業では派閥が林立しており、国内で自ら知的財産権を持つテレビ付き携帯の規格争いが絶えない。市場を占拠するための産業各分野の利益獲得戦略は、少しずつテレビ付き携帯の拡大を抑えつつある。長期的に見るとテレビ付き携帯の将来が明るいのは間違いないが、北京オリンピックを間近に控えて、その対立に“共倒れ”の局面が現れている。良好な市場環境の中で、中国手机テレビ付き携帯産業は、期待に応えられないことが懸念されている。

 市場全体の着手が遅く、歩行困難に
 賽迪顧問(CCID)の調査によると、主導者の違いによりテレビ付き携帯の業務は、ラジオテレビ放送主導と、モバイルキャリア主導とに分けられる。モバイルキャリア主導の業務は主に携帯ストリーミングで、ラジオテレビ放送主導はDMBやCMMB/DABなどのテレビ付き携帯である。携帯ストリーミング業務はモバイル通信ネットワークを通じて行われ、後者は放送ネットワークを通じて行われる。

 電気通信ネットワーク、ラジオテレビ放送ネットワーク、インターネットの“三ネットの融合”により、テレビ付き携帯の将来は明るいが、中国の電気通信とラジオテレビ放送は力を二分しており、両者ともテレビ付き携帯業界の主導権を握りたい考えである。そのため、規格が入り乱れて、市場全体の発展が困難になっており、急速成長段階には未だ至っていない。中国テレビ付き携帯の主なストリーミング技術には、現在DVB-HやDMB、そしてラジオテレビ放送が売り出しているCMMB規格、新岸線社が推すTMMB規格、国家標準化協会のCDMB規格、清華大学のDMB-T/H規格などがあり、統一された技術基準がないため、中国テレビ付き携帯は依然として「導入段階」にあると言えるのである。

 2007年、中国の展開するテレビ付き携帯業務の大部分はモバイルネットワークに基づいている。中国移動通信の“夢視界”業務にせよ、中国聯通の“視訊新幹線”にせよ、テレビ放送の内容がストリーミング形式で携帯端末に送られている。2007年、中国移動と中国聯通は携帯ストリーミングの開拓を重要視しており、大部分の省や市においてテレビ付き携帯業務を展開している。また、テレビ付き携帯の月額割引や端末などのカスタマイズによって、その業務を拡大しており、現在この分野のユーザーは500万を超えている。

 対する欧米や韓国などの先進国は、携帯放送の技術が高く、運営モデルの整備も進んでいるので、中国市場の携帯放送はまだ本当の意味で商用が実現したとは言えない。放送ネットワークによるテレビ付き携帯業務は、政策や規格面でまだ不確定要素がある。各技術メーカーの違いも大きく、多くのメーカーはわずか1、2個の商品しか出さず、価格も高いため、2007年はこの分野のユーザーは少なく、数万世帯であった。



 商用に向けて、積極的な各分野の標準化を
 2007年、テレビ付き携帯の国家基準問題は未解決で、基準が制定されていない中で、規格を持っている各大手は、産業化の準備を進めている。モバイルキャリア面においては、現在中国市場の多くのスマートフォンで、ストリーミング技術により映像を見ることができる。今後は運営能力を上げることで3G経験を蓄積し、その他の技術とも比較しながら、ストリーミング技術を向上させるのがベストだろう。

 また、DMBが2007年末に国際基準となり、多くの国で高く評価されているが、中国ではまだ重視されていない。現在中国の三大都市北京、上海、広東省ではT-DMB(DAB/DMB)がテストされている。その中で北京悦龍伝媒公司、上海東方明珠集団、広東南方伝媒はDMB技術を採用しており、韓国サムソン、LGも主に端末上でDMB技術を支持している。2007年、韓国電子通信研究所は中国知的財産権局に以下の4項目のDAB発信システムで提供できる、映像も含むマルチメディア放送サービス関連の技術の特許を申請した。分野別デジタルビデオ放送システムのマルチメディア業務転換装置と手法、デジタルオーディオ放送システムのマルチメディアサービスとマルチメディア放送設備と手法、デジタルマルチメディア放送システムと手法、デジタルオーディオ放送コントロールシステムのビットレート法およびその方法を用いた配信装置と手法。申請手順によると、公示から18ヶ月以内に否定意見がなければ、正式に中国の特許として許可されることとなる。

 中国のDVB-H技術はノキアが推し進めており、多くのヨーロッパメーカーが支持しているものの、中国国内での広がりは遅い。

 CMMBは、2007年の成績は非常に良く、CMMB組織に属している企業は120社にも上り、その中でチップ供給業者は泰景、FCI、創毅視訊など10数社、端末では聯想モバイル、華旗信息、中興通訊などの10社近くである。2007年“十一”(国慶節)のゴールデンウウィーク期間に、広電総局は北京、上海、天津、青島、秦皇島、大連などオリンピックが開催される6都市と広州、深圳の2大主要都市においてCMMB産業化に向けてのデバッグを行った。上海では東方明珠が提携パートナーとして協力している。2008年のオリンピックの際にはCMMB規格の実験ネットワークを構築する見通しで、ユーザーにモバイルテレビサービスを提供することができる。現在、“放送情報(broadcasting information channel)”、“復用”、“電子業務指南”、“緊急放送”、“デジタル放送”といった5つの基準を連続で公布しており、CMMBの基準システムを日に日に完成させつつある。現時点の問題は「時間」で、オリンピック前にCMMBが大都市で機能するのか、目が離せない。

 CDMBモバイルテレビ基準は、2007年5月中旬に中国標準化協会が公布した基準であり、携帯チップ、第五伝媒(新たなモバイルメディア)、衛星放送携帯、番組(コンテンツ)制作等のCDMB産業基地は天津浜海新区におかれるようになった。その面積は1平方キロメートル近くにもなる。基地では、チップ設計、端末デザイン、マルチメディアコンテンツ企業が主となっており、規格制定から、製品テストセンター、チップ設計、端末の全デザイン、マルチメディアコンテンツまで全ての産業チェーンに、70~80億香港元を投入している。中聯通信、台湾威盛、中電賽龍、広信創新などの企業が基地に参入する予定である。現在、CDMBにおける最大の問題は運営者の実質的な参入が不足している点であり、商用にはさらなる検証が必要なのである。
T-MMB陣営では、規格の特許における困難を避けられず、各規格の混戦が続く状況では業界に朗報をもたらしてはいない。

 注目すべきは、2008年初めのTD-SCDMAのモバイルテレビ基準におけるポイントとなった進展である。現在この基準の主導メーカーは、大唐、中興、普天、鼎橋を代表とするシステムメーカー、展訊、T3G、凱明を代表とするチップメーカー、中興、聯想などの携帯メーカーなど国内の主要通信企業である。システムデバイスでは、大唐、中興、普天などがオリンピックに向けて第一バージョンのTD-MBMSを完成させており、この規格は産業規格に正式申請する段階に来ている。この他、清華大学のDMB-T/H方式も浙江、陜西、遼寧、四川等でテストネットワークが構築されている。

 市場の状況は悲喜こもごも
 2007年、テレビ付き携帯電話産業の進展は衆目の認めるところであるが、市場全体は悲喜こもごもといった状況である。規格の標準化が進む中で、上記のような成果をあげてはいるが、同時に規格乱立といった弊害も生まれている。2007年にはITU(国際電気通信連合)がDMBをテレビ付き携帯の国際基準とし、EUでもノキアのDVB-Hがヨーロッパのテレビ付き携帯規格として承認されている。対する中国のテレビ付き携帯の国家基準は遅々として決まらず、テレビ・ラジオ放送と電気通信の二大部門はテレビ携帯での発言権を争っており、双方が各自の運営モデルを打ち出している状態である。両者の対立がテレビ付き携帯の商用過程を遅らせ、業界を混乱させており、市場にはこういった多くの要素が存在しているのである。

 ここ数年のカメラ付き携帯、音楽携帯市場の急速な発展から見ても、間違いなく中国テレビ付き携帯市場には巨大な発展への潜在能力と利益空間を秘めていると言える。“眼球経済”(人々の注目を集め利益につなげる)主導の業務の発展動向が見られる中で、新たな業務としてテレビ付き携帯は、斬新なサービス、豊富なコンテンツ、強い相互作用などの強みを生かして幅広いユーザーを獲得するだろう。また、携帯メール、写真・動画付きメールの次の時代の新たな注目点となるだろう。この過程で我が国のテレビ付き携帯業務発展への路をいかに探求していくかが極めて重要で、規格の確定、各利益獲得モデルの競合、ユーザーの細分化などの重要要素を考慮しなければならない。

 提携してWin-Winへ
 筆者は、国内のテレビ付き携帯業務は急速成長へのポイントの段階に差し掛かっており、無意味な対立が資源を浪費し、産業化への大切な機会を取り逃がしてしまうことにもなりかねないと考えている。現在のテレビ付き携帯発展の面から見ると、ラジオテレビ放送と電気通信の双方は互いに補い合う関係にある。両者の産業チェーンの強みを見ても、「三ネット」融合の中で、互いの協調と相互作用により共に発展していけるだろう。電気通信は、通信技術、ネットワーク、膨大なユーザーがあり、対するラジオテレビ放送は、豊富なコンテンツと放送インフラを持っているためである。以上のように2008年テレビ付き携帯では、融合、相互作用、協調が三大キーワードになるだろう。

 現在、政策面にも積極的な姿勢は伝わっている。2007年末、《インターネット視聴番組サービス管理規定》の施行は、電気通信ネットワーク、ラジオテレビネットワーク、インターネットの“三ネットの融合”へ実質的に踏み出したことを示している。2008年初めには、国務院弁公庁が転送し、国家開発改革委員会、科学技術部、財政部、情報産業部、税務総局、広電総局が共同で制定した《デジタルテレビ産業発展に関する若干の政策》は、テレビ・ラジオと、電気通信の融合を奨励している。これ以前にも、移動、聯通の二大キャリアがそれぞれラジオテレビ放送分野との提携をしている。

 市場を長期的に見ると、ただモバイルキャリアとラジオテレビ放送の提携だけに頼るだけでは、もちろんまだ足りない。コンテンツサプライヤーや、携帯電話メーカー、ソフト開発メーカーなど各部門との協力も不可欠である。賽迪顧問(CCID)は、海外の先進国の成功経験から見て、この先数年でテレビ付き携帯は大きな発展を遂げるには、良好なネット環境、多くの対応端末、魅力的なコンテンツ、利用者が使用料を受け入れることが不可欠要素であると見ている。中でも、ラジオテレビ放送と電気通信の強力な結びつきと同時に、ユーザーの細分化、サービス内容に応じた効率的なビジネスモデルが最も重要だと考えている。

 見通しは明るく、将来の成長に期待
 以上を総合して、新たな融合型のマルチメディア業務の形態として、テレビ付き携帯はモバイル通信の特徴と利点を活かすことができ、膨大な潜在的ユーザーを持っている。5億を超える膨大なユーザーが、個性的かつ体験に基づいたニーズを提供することになるだろう。また各方面の技術の普及と整備により、潜在的なテレビ付き携帯ユーザーを表面化させることもできる。したがって、現在テレビ付き携帯は多くの困難に直面しているが、長い目で見ると通信ネットワークの拡大とサービス使用料の低下、視聴機能のついた機種の普及に伴い、その業務はますます発展し、大きな市場を形成していくだろう。

 産業化の経過から見ると、2007年以前は市場全体がゆるやかな開拓期だったが、2007年に入り各産業チェーンが積極的になり始めた。賽迪顧問(CCID)は、2008年以降ネットワークの整備に伴い、端末やコンテンツなどがますます強く一体化することで、従来の制約は次々と解決し、市場は成長期へと突入するだろうと予測している。この先五年、中国のテレビ付き携帯ユーザーの増加は加速し、2011年には1億世帯に上ると見られる。その中で、2010年にはモバイル放送が携帯ストリーミングを上回り、市場はモバイルテレビ放送へと移行していくだろう。


 同時に、現在市場にある料金モデルや使用料の基準に基づき、この先5年のテレビ付き携帯料金を月額に統一し、月30元の使用料とするならば、中国テレビ付き携帯市場全体は急速な成長を保ちながら、2011年には360億元近くの収入になるだろうと賽迪顧問(CCID)は予測している。




コラムニスト CCID Ccid
参照URL
最終更新日 2012-11-14

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧