WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

2007年中国IC産業&市場分析 (2008年09月03日)

 一、2007年中国IC産業
 2007年、全世界半導体市場が伸び悩み、国内IT産業の成長率がゆっくりと下降する中で、中国IC産業は引き続き安定成長を維持した。産業全体の売上高は、2006年に初めて1000億元を突破して以来基本的に急速成長を維持して1251.3億元に達し、前年同期比24.3%増となっている。


 2007年国内の各IC産業の発展の中で、IC設計、チップ製造、パッケージテスト産業が伸びており、中でもパッケージテスト産業の成長が最も早い。国内の基幹パッケージ企業は増資、拡大し、また国際半導体市場のニーズの上昇により国内ICの輸出が大幅に増えた。これら2点の要因により、2007年国内ICパッケージテスト産業は、計627.7億元の販売収入を実現、前年同期比26.4%増となり、引き続き発展傾向にある。チップ製造は、全世界チップOEM市場は低迷しているものの、無錫海力士-意法(Hynix-ST)等の新プロジェクトにより急激に生産能力が上がったため、国内チップ製造業全体の販売収入は急速成長を維持、2007年は計397.9億元の販売収入、23%増となっている。対するIC設計業は、2007年はこれまでの成長の勢いはなくなっている。年間の業界売上高の伸び率は2006年の49.8%から大幅に下落し21.2%となり、初めてIC産業全体の伸び率を下回ることとなった。


 IC設計とチップ製造産業のすさまじい発展に従って、国内ICバリューチェーンの構造にも変化が生じており、設計とチップ製造の全体に占める割合が急速に上がっている。しかし、2007年にはパッケージテスト産業の急速な発展と、IC設計産業の伸び率の下降により、国内IC産業チェーンの構造も変化し、IC設計業の売上高は2006年の18.5%から18%へ、チップ製造も32.1%から31.8%に下がっている。対するパッケージテスト産業は49.3%から50.2%へと上昇している。



 2007年を振り返った上で、国内IC産業の発展予測は以下の通りである。

 1、産業発展速度は下降、一部の主要企業は業績不振
 2007年中国IC産業の成長速度は明らかに下降しており、24.3%という年度増加率は2006年の36.2%と比べると11.9ポイントも下がり、2007年初めの30%前後という予想を下回ることとなった。中でも、IC設計業の伸び率は大幅に下落し、初めてIC産業全体の伸び率を下回った。業界全体の発展速度が緩やかになると同時に、珠海炬力、中星微などのIC設計企業、中芯国際、華虹NECなどチップ製造、深圳賽意法などのパッケージテスト企業の2007年の業績が下降しており、これは近年見られなかったことである。

 2007年中国IC産業全体の発展が緩やかになっている原因としては、全世界の半導体市場の低迷と国内市場の伸び率の下降以外に、人民元の絶え間ない高騰も重要な原因の一つとして挙げられる。中国IC産業の販売収入の半分以上が輸出であるため、人民元の高騰は、人民元での売上換算の際に大きな影響を与えるのである。2007年の米ドルー人民元レートは、年初は1ドル7.9元だったものが、年末的1ドル7.2元まで上がった。したがって国内IC産業の人民元による売上収入の伸び率も5ポイント下がることとなり、中芯国際などの企業の人民元業績に影響している。

 2、生産ライン建設の新たな成果 投資が産業発展の原動力に
 2007年中国IC産業の生産ラインへの投資と建設は依然として勢いを保っている。チップ生産ラインでは、無錫海力士-意法の12インチが好調で、通年で93.59億元の売上を実現、2006年の2.4倍増となっており、2007年国内チップ製造業の拡大を牽引している。この他にも国内のICチップ生産ラインは建設中および増産中で、2007年12月に操業を開始したばかりの中芯国際(上海)12インチチップ工場、現在建設中の海力士-意法の無錫第2工場、茂徳の重慶における8インチチップ工場、インテル大連の12インチチップ工場、2008年初めに中芯国際が深圳に建設すると発表した8インチ、12インチの生産ライン、インテルがサポートする深圳方正微電子の第2工場などがある。また、中芯国際の北京および天津工場、華虹NEC、台積電上海、宏力半導体などは年内に生産能力を拡大する予定である。以上のような絶え間ない生産能力の拡大によって、将来の国内チップ製造業の規模は引き続き大きくなっていくだろう。

 パッケージテスト分野では、各主要メーカーが大規模な拡充を行っている。長電科技は20億元を投資し建設した年50億個の生産が可能なIC新工場を2007年正式稼働させており、サムソン電子蘇州半導体公司は第2工場の操業を開始し、Freescale、キマンダ(Qimonda)、RFMD、ルネサス(Renesas)などはそれぞれ中国国内のパッケージ企業を増資し拡張させている。これらの企業の2007年の販売収入の大幅な増加に従い、国内パッケージテスト産業は再び急速に伸びているのである。同時に松下電器が100億円を投じた蘇州における半導体パッケージの新工場建設を発表、意法半導体は5億米ドルを投資し、深圳にパッケージ新工場の建設を開始、2009年初めの操業予定である。これらの新築プロジェクトも同時にパッケージテスト分野成長の原動力となっている。

 3、企業再編が新たな進展 株式公開が企業の発展を支える
 2007年、展訊通信、南通富士通、天水華天など数社が、米国ナスダックと中国国内に上場した。これにより、国内半導体関連の上場企業は19社にも達し、IC設計、チップ製造、パッケージテスト、ディスクレイドデバイス、半導体材料など多くの分野をカバーしている。これら19の上場企業には、中芯国際、上海貝嶺(Belling)、上海先進、華潤上華、華微電子などのチップ製造企業、復旦微電子、士蘭微、珠海炬力、中星微、展訊通信などのIC設計企業、長電科技、南通富士通、華天科技などの等パッケージテスト企業、常州銀河、蘇州錮得、康強電子などディスクレイドデバイス企業、および有研硅谷、浙大海納、三佳科技など半導体材料企業が含まれる。

 4、市場競争の激化 IC設計企業は厳しい局面に
 新型身分証チップが、ここ数年国内IC設計産業の大きな市場の一つであり、IC設計企業の発展を牽引していた。しかし、国が新型身分証の発行を終えると、2007年新型身分証チップ市場の伸びは止まり、縮小の一途をたどることとなり、2007年の関連企業の業績に影響を与えた。従来の市場の大幅な縮小と同時に、3G、デジタルテレビなど新興市場が規格、許可証、キャリアの統合・再編など多方面の要素の影響で遅々として正式始動が進まないといった状況が、国内の多くの関連分野の研究開発を行っているIC設計企業に支障をきたしている。中国IC設計企業の市場環境は今、端境期の最も困難な時期であると言えるだろう。

 同時に、国内IC設計企業は日々熾烈な競争に直面している。例えば、MP3チップ分野では、珠海炬力以外の、福州瑞芯、上海吉芯電子、深圳安凱などその他国内企業が市場競争に参入し、競争がいっそう激しくなっている。携帯電話チップ市場では、台湾の聯発科技(メディアテック)がADI携帯部門を買収した後、いわゆる“黒携帯”(違法携帯電話)市場から、TD-SCDMAを含む正規の携帯チップ市場に参入、また、多くの台湾IC設計企業も大陸の携帯チップ市場に参入または参入を計画している。このため、この分野もますます競争が激しくなり、大陸IC企業のプレッシャーは日増しに増えていくことになるだろう。

 国内IC設計分野の価格競争激化の原因を分析すると、企業ごとの差別化がますます曖昧になり、似たような商品が増えていることが根本的な原因である。500社近くの設計企業の中で、大多数の企業が中・低価格のコンシューマ類チップに集中しているのである。このことが価格競争を引き起こし、市場競争を激化させている。

 二、2007年中国IC市場
 2007年中国IC市場の売上高は5623.7億元、前年同期比18.6%増、依然として高い成長率ではあるが、4年連続で下降している。


 2007年を振り返った上で、国内IC市場の発展予測は以下の通りである。

 1、市場成長速度は緩くなり、伸び率は4年連続で下降の見込み
 2007年は、過去5年で伸び率が最低の1年であった。市場成長率は市場基数の拡大に従って次第に下落している。その本質的な原因として、多方面で生産成長率が飽和しつつあることが挙げられる。中国IC市場の高い成長率は下流機器の生産量の高成長に依存して維持できてきた。しかし、数年連続の高成長の後、中国下流機器の生産量の増加速度は遅くなり、多数の領域で飽和している状態になり、さらに、2007年は生産量も下落することとなった。応用部門を見ても、自動車電子以外は高成長の領域はなく、自動車電子市場シェアがより小さいので、市場全体の増加にはあまり反映していないのである。

 2、DRAM価格の大幅な下落が市場全体の足を引っ張る
 メモリ(記憶装置)は中国半導体市場の中で依然として最大のシェアである。近年、記憶装置の価格は大きな変動があるが、NAND FlashやDRAMの牽引のもとで、市場は大幅な成長を遂げている。しかし、2007年はこのような状況に変化が生じている。NAND Flashは正常だと言えるが、DRAMは供給が需要を上回ったため、2007年価格の下落幅が最大となってしまったのである。下半期にはある程度安定を見せたが、年間価格の大幅下落という状況は変えられず、結果的にメモリ(記憶装置)市場の足手まといとなってしまった。

 3、コンシューマエレクトロニクスの成長速度は緩やかに
 中国IC市場のコンシューマ分野は穏やかに発展していたが、2007年には、市場で成長率が最も低い分野となった。中国コンシューマエレクトロニクス製品は、近年高い成長率を保っていたが、生産量の増加に従って飽和状態となり、いくつかの従来の家電製品は世代交代が進み、生産量も下降した。全体を見ると、コンシューマ分野の中では新興デジタル類が比較的高い伸び率を保っているものの、従来の家電製品は伸び悩んでいるため、中国コンシューマIC市場は2007年に明らかに減速したのである。

 4、グローバル電子製造業の「生産能力」の転移が中国IC市場に与える影響大
 近年の中国IC市場成長の主な原動力の一つとして、グローバル電子製造業が生産拠点を中国に移したことが挙げられる。現在、中国IC市場の伸び率が4年連続で下降しているのは、そういった生産能力の転移が年々緩やかになり、市場への貢献も次第に少なくなっていることが原因の1つとされ、こういった状況は今後も続くと見られている。

 三、2008年産業・市場の展望
 生産能力移転の減少と機械類製品の下降に従って、中国IC集市場も数年連続で下降している。しかし、2008年は一つの山場を迎え、市場成長率はここ5年で初めて伸びるだろう。その主な要素として、オリンピック開催により、デジタルテレビや3Gなどのニーズが高まることが挙げられる。しかしながら、機械類生産量にしてもIC市場にしても、すでに市場基数は高いレベルにある。つまり成長は飽和状態なのである。このため将来は中国ICの発展はやはり緩やかになり、中国市場の全世界に占める割合の増加に従い、二者の成長動向は一致するだろう。つまり中国市場の成長率は、今後数年においては依然として世界市場より高いが、世界市場の成長率に徐々に近づくと予想される。総合的に見ると、2008-2012年に中国IC市場の複合成長率は16.2%に達し、2011年には、中国IC市場の規模は初めて1兆元を突破し、1兆806億元に上ると見られる。


 価格面では、半導体の価格は下降傾向にある。一般的に、大多数の主な半導体製品は緩やかに下降している。例えばパソコンのCPUやDRAMなど主なPC用半導体製品の価格の下落により、ノート型、デスクトップ共に価格が下がる傾向にある。DRAMやNAND Flashは、主な生産を大工場が担っているため、その戦略や生産能力の調整が市場に与える影響は大きい。2006年のNAND Flash価格と2007年DRAM価格が急速に下落したのは製品の供給が需要を上回ったためであり、この2年の大幅な変動の後、これらの大工場は冷静さを取り戻したのである。2007年DRAM価格の大幅な下落後、あるメーカーはDRAMの生産を調整し、NAND Flashを生産した。そのため2008年DRAMの価格は比較的安定するが、NAND FlashはDRAMよりも急速に下降することになるだろう。そのほかアナログデバイス市場は、2007年価格下落の影響を受けたが、将来におけるニーズが比較的高いため価格の変動は大きくないだろう。
 
 産業の発展では、国内IC産業の将来において有利、不利な条件を次の通り分析する。有利な条件としては、国内市場ニーズは引き続き伸び、産業政策、投資環境も改善されることである。また効果的な人材の育成と導入などもIC産業の発展を牽引していくだろう。しかし同時に、全世界の市場の見通しが不明瞭なことや、産業競争の激化、産業チェーンがスムーズではないことなどが不利な要素として挙げられるのである。
これらの要素を総合すると、中国IC産業は将来も穏やかな成長を維持すると見られる。2008-2012年の5年間で、中国IC産業全体の販売収入の年平均伸び率は23.4%に達すると見られる。2012年には、3000億元を突破、3576.6億元になる見込みで、その時には中国は世界の重要IC製造基地の1つとなっているであろう。




コラムニスト CCID Ccid
参照URL
最終更新日 2012-11-14

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧