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「網民」が形成する中国の世論 (2008年06月30日)

 中国では最近、インターネット上の書き込みがきっかけとなって社会が動くことが多くなっています。

 家楽福(じゃーるぁふー、カルフール)の不買運動を主導したのもインターネットですし、家楽福が四川大地震に多額の義援金を送ったことで「みんなで家楽福に買い物に行こう!」という180度反対の世論を形成したのもインターネットです。

 更に、ハリウッドスター、シャロン・ストーンが「この大地震はチベット弾圧に対するカルマ(報い)だ」と発言したことに対して、同氏が一部商品のモデルをしているクリスチャン・ディオールの不買運動を起こし、同氏が中国で一切の仕事ができないところまで追い込んだのもインターネットです。

 中国ではインターネットの利用者のことを網(ネット)に住んでいる民ということで「網民(わんみん)」と呼びます。中国の「網民」は昨年末の時点で2億1000万人に達していると言われています。

 その多くが都市部の若年層であると思われますが、今の中国では全人口の15%強を占めるこの「網民」が世論を形成し不買運動などによって85%の「非網民」を先導する、という構図ができつつあります。

 インターネット上の書き込みは匿名ですので「便所の落書きと同じ」という人もいます。確かに匿名であることを良いことに、実名を出してはとても言えないようなとんでもない誹謗中傷の書き込みがたくさんあることも事実です。

 しかし、面白いことにたくさんの人の批判が集中するいわゆる「炎上」状態になる場合は、非常に真っ当な「正義感」や「倫理観」が働いていることも事実です。真っ当な意見だからこそ世論が形成され社会が動くまでに発展するのです。

 私はこうした状況が更に進むことを最も恐れているのは他ならぬ中国共産党ではないかと思います。

 今回の四川大地震でも政府の対応の遅れを批判するような書き込みは、政府によってどんどん削除されていると聞きますが、裏を返せば政府はインターネット上で「炎上」の対象となり、中国全土に反政府の世論が形成されることを最も恐れているのです。

 「人民日報」でプロパガンダができる時代は終わりました。中国共産党は反政府的な書き込みを削除するヒマがあったら、「網民」に「炎上」の対象にされない正しい政治を行うことに全精力を傾けるべきなのではないかと私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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