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中国携帯電話チップ市場分析 (2008年09月03日)

 輸出と内需両者の牽引の下、2007年中国携帯電話生産量は引き続き増加し、5.54億台、伸び率25.4%となっており、その中で輸出は58.2%、3.22億台を占めている。現在中国は、全世界携帯電話の製造基地としての地位を確固たるものにしており、ノキア、モトローラ、サムスン、ソニーエリクソンといったメーカーも産業拠点を中国にシフトしつつあるため、中国の携帯電話輸出量は26.2%増となっている。同時に中国国内企業の業績も大きく伸びており、特に中興、華為、天宇などの成長が著しい。

 2007年中国携帯電話チップ市場規模は844.1億元に達し、前年比23.9%増である。チップ市場に影響を与える主な要素は携帯電話生産量だが、他には商品構造のグレードアップや、新機能のアプリケーションとシングルチップ商品の拡大なども挙げられる。


 応用構造を見ると、ベースバンドプロセッサが26.5%と一番高い割合を占めており、また携帯マルチメディア機能の増加に伴い、マルチメディアアプリケーションチップも高い割合で21.6%である。内蔵メモリの容量は増えているのだが、価格の下落とMCPの増加により、全体に占める割合は減少傾向にあり、2007年は前年の24.2%から19.4%へと下がっている。ここ数年は、シングルチップソリューションが急速に増えている影響で、電源管理と無線モジュールの割合は低くなっている。この他スマートフォンやGPS携帯、ブルートゥース(Blue tooth)/WiFi機能付携帯などの増加により、アプリケーションプロセッサ、無線接続やその他のチップも増えてきており、この先数年は増加傾向を維持するだろうとみられる。


  チップ規模(集積度)の持続的な増加
 ベースバンドチップが携帯電話の中でコアとなる部分だが、その規模(集積度)の増加が携帯電話プラットフォーム構造の変化に直接影響している。携帯電話ベースバンドチップ商品は基本的に7つに分類されるが、その中でデジタルベースバンドとアナログベースバンド市場(DBB+ABB)の市場に占める割合が高く、Qualcomm、NXP、Agere、Broadcom、Freescale、Infineon、MTKなど非常に多くのメーカーが採用している。続いてデジタルベースバンドチップと、アナログベースバンドもしくはアナログと電源管理を融合したソリューション(DBB/ABB+PM)があり、TIとSTが主要メーカーである。携帯電話の超低コスト生産の増加に従い、シングルチップ・ソリューション(ABB+ABB+RF+PMU)市場も急速に成長しており、全体の10.4%を占めている。近年の市場の発展を見ると、ベースバンドチップ規模は大きくなり、DBB+ABB+RF+PMU(シングルチップ・ソリューション)とDBB+APP方式の割合が高くなっている。ベースバンドチップ以外では、マルチメディアプロセッサ、無線接続、メモリチップも集積化傾向にある。


  アプリケーションプロセッサは2重の脅威に直面
 携帯の各種機能へのニーズの高まりに従い、スマートフォン用ではないチップ技術も、高性能化している。このような状況に順応するために携帯電話チップには以下の2つの方向への発展が考えられる。まず、ベースバンドチップの高集積化。いくつかの通信標準をカバーするだけではなく、マルチメディア機能や、対応ディスプレイを用いた画像センサーとAV設備のインターフェイス(例:MTKの6226方式など)を提供する。もう一方は、従来のMP3を用いて、画像処理のコプロセッサの集積度を上げることである。さらに多くのマルチメディア機能を備え、通信モジュールをシングルチップ化させることで進化していくのである。典型的な例として、InfineonのULC1/ULC2や、安凱(Anyka)や智多微(Chipnuts)のコプロセッサ組込式携帯などが挙げられる。現在の中国携帯電話市場では、フィーチャーフォン(Feature Phone)と准スマートフォン(Smart Phone)の成長が最も著しい。准スマートフォンとは、AV機能だけではなく、Officeドキュメントを処理したり、PDF文書を読んだり、ゲームができたりする機能を持っているもので、スマートフォンとの唯一の違いは、正規のサポートシステムなどがないことである。しかしながらスマートフォンと比べて、価格的には明らかに有利で、携帯デザインメーカーの支持も得ており、生産企業(特に中国国内企業)にとっては開発時間を短縮でき、コストダウンも可能なため、主力商品となっている。このため、今後しばらくは中国携帯チップ市場のアプリケーションプロセッサは、高性能ベースバンドチップと高性能コプロセッサの脅威を受けることになるであろう。

  国内チップメーカー、急激な実力アップ
 ブランド構造を見ると、TI、Qualcomm、Infineon、NXP、MTKといった携帯電話プラットフォームチップメーカーの地位が高く、この他にはメモリのSamsung、Intel、Spansionや、商品ラインの豊富なST、RFMDといった企業が市場の重要な地位を占めている。発展能力の面では、3Gチップメーカー、アプリケーションプロセッサメーカーが有力である。この先数年は3G市場が最も急速に成長する時期と言え、国内携帯電話チップアプリケーション市場では、Qualcommがその3G分野での地位をよりどころにすることで、最も発展能力のある企業となるだろう。


 中国は携帯チップへの着手が遅れたため、国内企業のシェアは低く、商品はマルチメディアチップ、MP3デコードチップ、画像処理チップ、和音チップ等のコプロセッサ分野に集中している。また、その下流顧客の多くは国内の携帯製造企業であるが、ノキア、モトローラなどの中国で膨大な生産量を持つグロバールメーカーの供給システムに参入するすべがない。しかし、国産携帯の増加と、マルチメディア携帯、3G業務の発展に従い、国内携帯チップメーカーは近い将来きわめて大きな発展を遂げる潜在能力を秘めている。そして、3G、マルチメディアアプリケーション、スマートフォンの三大分野において、携帯チップ市場発展の原動力となるだけではなく、国内チップメーカーにも発展の機会をもたらすことになるだろう。

 この先数年、中国携帯チップ市場は、携帯電話生産量と共に穏やかな成長期に入るだろう。2009年中国携帯チップ市場は1000億元を突破し、2012年には1461.3億元に達する見込みである。2G/2.5G時代には音声に重きを置き、コアチップはベースバンド(Baseband)であったが、3G時代に入り携帯電話はマルチメディアやビジネスへの応用がますます増えている。このため3G携帯生産量の増加により、マルチメディアアプリケーション、メモリチップ、無線接続チップ市場が比較的大きく成長するだろう。




コラムニスト CCID Ccid
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最終更新日 2012-11-14

 

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