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ポスト「世界の工場」時代の選択肢 (2008年08月04日)
既に「世界の工場」ではなくなった中国。
「安価な労働力による人海戦術で作ったコストの安い製品を世界中に輸出する」というビジネススキームは、人件費の上昇により付加価値の低い製品から成り立たなくなりつつあります。 「世界の工場」時代の中心地、広州から深セン、珠海にかけての珠江デルタ地域を擁する広東省は、法定最低賃金を2006年9月に17.8%、今年4月には更に12.9%引き上げました。これにより最も高い広州市の最低賃金は月880元(13200円)となりました。 しかし、この最低賃金で雇えるのは清掃作業員ぐらいで、例えば、縫製工場で働くミシン作業員ならば、最低でも月1500-1600元(22500-24000円)ぐらいは出さないと雇えないそうです。 この人件費の上昇の他に、今年1月の新労働契約法の施行、人民元高、環境規制の強化、外資優遇政策の廃止など様々な要因により、珠江デルタの主役である香港企業の生産コストは急激に上昇、珠江デルタに進出している香港企業6万社の内、半分の3万社が既に撤退を決めているそうです。 珠江デルタから撤退する香港企業の選択肢は3つ。 1つ目は人件費がまだ沿海部ほど高騰していない中国内陸部に工場を移転すること。しかし、工場を内陸部に移転しても人民元高の影響は避けられませんし、内陸部でも人件費が高騰するのは時間の問題です。 2つ目はベトナムなど中国より人件費が安い東南アジア諸国に工場を移転すること。これならば、中国の内陸部よりも人件費高騰のペースは遅いでしょうし、人民元高の影響も受けません。 そして、3つ目は廃業。中国には背中を追い風で押されるようなビジネスチャンスが他にたくさんあるのですから、この際、低付加価値の製造業からは足を洗って、もっと楽しくて儲かるビジネスに転業するのが、一番賢い選択なのかもしれません。 |
コラムニスト | 柳田 洋 |
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最終更新日 | 2012-04-27 |