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減速する中国の経済成長 (2008年11月06日)

 先月発表された中国の今年7-9月の国内総生産(GDP)は前年同期比9.0%増でした。

 2007年の中国のGDP伸び率は11.9%で過熱気味と言われていましたが、2008年1-3月は10.6%、4-6月は10.1%、そして7-9月は9.0%まで落ち込み、世界的な金融危機の影響による景気の減速が顕著になってきています。

 景気減速の一番の原因は輸出の減少です。元々、中国政府はインフレ抑制政策の一環として、過剰流動性の元凶である輸出を減らす政策を打ち出してきました。そこにアメリカを始めとする主要輸出先の金融危機による景気減速が重なり、輸出の伸びが鈍化しています。

 この輸出の不振により、紡績や玩具など低付加価値製品を輸出する工場の撤退や倒産が相次ぎ、そうした工場が最も多い広東省では工場閉鎖や給与未払いに対する労働者の抗議活動が頻発、社会の安定にも影響が出始めているようです。

 輸出の伸びが鈍化する中で経済成長を維持するためには、国内の投資と消費を伸ばさなければならないのですが、投資については昨年来高止まりしていた不動産市場が、ここに来て大都市を中心に急速に冷え込んできてしまいました。

 中国不動産協会がまとめた今年1-8月の分譲住宅の成約面積は、北京で前年同期比55.5%減、上海で38.5%減となったそうです。昨年は不動産価格が上昇を続け「今マイホームを買わなければ、永久にマイホームを持てなくなる」という強迫観念から、多くの人が先を争ってマンションを買っていましたが、最近になって不動産市場の雲行きが怪しくなると「もうちょっと待てば、もうちょっと値段が下がるんじゃないか」という買い控えが起こり、不動産市場の冷え込みに拍車をかけているようです。

 輸出もダメ、投資もダメとなると、残る頼みの綱は消費だけです。国家発展改革委員会もこれ以上の景気の減速を食い止め、年間9%の成長を維持するために「景気が下振れする気配が感じられたら、速やかに内需対策を打つ」としています。

 中国では経済成長率が7%を下回ると失業問題などで国内が混乱に陥ると言われていますので油断はできません。しかし、こう考えていくと今回の世界的な金融危機は、中国にとっては経済成長を輸出、投資主導から消費主導に転換する良い機会となるのではないでしょうか。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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