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中国の景気コントロール能力 (2008年11月28日)

 先日、大手金融機関・クレディスイスが発表した調査レポートの予測によれば、中国の経済成長率は2008年は8.7%に止まり、2009年には7.2%まで落ち込むであろうとのことです。

 同社のシナリオでは、中国の経済成長率は年率ベースで2008年10-12月は5.8%、2009年1-3月は6.0%、2009年4-6月は6.3%と低迷を続け、2009年7月以降は公共投資や各種緩和措置が効果を表し始めて成長率が上向く可能性が大きいが、今後3-5年は2ケタの成長ペースを取り戻すことは難しいであろう、となっています。

 中国は経済成長率が7%を下回ると、十分な雇用の創出ができず社会の安定が保てなくなる、と言われていますので、中国経済がこのシナリオ通りに進むとすれば、中国は今後1年間、かなり危機的な状況に見舞われることが予想されます。

 現在、中国株の株価は一時期よりは上昇したとは言え、いまだ非常に低い水準にあり、株価収益率(PER)や配当利回りで見ればお買い得の大バーゲンセールが続いています。

 しかし、こうした異常に低いPERや異常に高い配当利回りは景気が良かった前期の収益や配当を基準に計算されていますので、今後景気の減速によって企業業績が悪化し収益や配当が低下すれば、一足先に下落した株価に企業業績が追いついて、PERや配当利回りが「正常」になってしまう可能性もあながちないとは言えないような気がします。

 しかし、こうした金融機関のアナリストが出す予測の盲点は、中国を諸外国と同じような「普通の国」として捕らえているところにあります。中国は「普通の国」ではありません。中国は共産党一党独裁国家であり、政府が自国の景気をコントロールする手段を「普通の国」よりずっとたくさん持っています。

 経済成長率が7%を下回って失業者が巷に溢れ、国内の治安が悪化するような兆候が表れれば、中国政府は即座にあらゆる手段を使って景気の下支えをするでしょう。

 中国政府は先日発表した4兆元(57兆円)の公共投資のスケジュールを必要に応じていくらでも前倒しすることができますし、中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁は、人民元を切り下げて一度殺しかけた輸出産業を復活させる可能性も排除しないと言っています。

 「普通の国」ではない中国では、政府が自国の景気の浮き沈みをある程度までコントロールすることができるのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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