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中国共産党の前に立ち塞がる「ネガティブな記念日」 (2009年03月02日)

 今年中国は建国60周年という節目の年を迎えます。このため、建国記念日である10月1日の「国慶節」には、10年ぶりに大規模な軍事パレードが行われる予定になっています。

 10月1日の「国慶節」は中国共産党にとって建国60周年という「ポジティブな記念日」ですが、2009年は共産党にとっての「ネガティブな記念日」もいくつか控えています。

 1つは3月10日の「チベット動乱50周年記念日」です。このチベット動乱はチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の海外亡命につながった事件であり、昨年3月のラサ暴動は動乱の49周年を記念する僧侶のデモが発端となりました。

 ダライ・ラマ14世自身はチベットの独立は要求せず、中国政府との話し合いによる問題の解決を求めていますが、同氏の陣営の中では暴力による独立を求める強硬派が台頭してきており、チベット動乱50周年記念日に合わせて大規模な抗議行動が計画される可能性が高いと言われています。

 2つ目は4月25日の「法輪功中南海包囲事件10周年記念日」です。この事件は1999年4月25日に気功集団「法輪功」のメンバーが中国全土から北京に集結し、中国共産党の権力の中枢・中南海の周りをぐるりと包囲した事件です。

 最近は目立った活動が伝えられていませんが、中国共産党は「法輪功」を亡命チベット人、ウイグル独立派と並ぶ三大安定破壊集団の一つと認識しており、彼らの活動に対する警戒を緩めてはいないようです。

 そして3つ目は6月4日の「天安門事件20周年記念日」です。中国共産党はこの天安門事件に対する「反革命的暴乱」という評価を変えていませんし、「西洋式の民主主義は中国には合わないので、中国独自の民主主義化を進めていく」という立場を採っています。

 しかし昨年末、中国国内の学者、弁護士、作家、新聞記者など303人が、中国共産党の一党独裁を糾弾し、民主と自由、人権尊重等を求めてインターネット上で発表した「08憲章」が国民の間で大きな反響を呼んでおり、天安門事件20周年を機に中国国内で民主化要求が再燃する可能性もあります。

 今後、中国共産党は景気の減速による失業者の増加で増大する社会不安を解消していく一方で、独立派や民主化勢力を抑えて国内の安定を図っていかなければなりません。

 中国共産党指導部は年の前半に集中する「ネガティブな記念日」を無事にやり過ごし、10月1日の建国60周年記念日という「ポジティブな記念日」を笑って迎えることができるのか。

 2009年は中国共産党の国内統治の力量が試される年となりそうです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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