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「非誠勿擾」と中国人の北海道旅行ブーム (2009年03月31日)

 私先日、北京の日本大使公邸で行われた宮本大使主催の晩餐会に、北京日本人会を代表して出席して参りました。その日のお客様は、今中国で大ヒット中の映画「非誠勿擾(ふぇいちぉんうーらお)」の馮小剛(ふぉんしゃおがん)監督、主演の葛優(がーよう)さんを始めとするこの映画のスタッフのみなさん。

 この映画の後半部分の舞台が北海道であり、映画の大ヒットがきっかけで北海道旅行に行く中国人が激増しているため、宮本大使が日本を代表して、映画のスタッフのみなさんに感謝の気持ちを示すことを目的としてその晩餐会は開かれました。

 「非誠勿擾」は読み下すと「誠に非ずんば擾(わずら)わす勿れ」、つまり「誠意のない人は連絡してこないでください」という意味です。中国では新聞などに結婚相手募集広告を出すときに、文章の最後に「ひやかしお断り」ということで書き添えられることが多い決まり文句なのだそうです。

 この映画は、葛優さん演じる発明で大金持ちになった独身の40男が、いわゆる「婚活」を続ける中で、本当に愛する人を見つけていく過程をコメディータッチで描いたものです。映画の後半部分は舞台が中国から北海道に移り、北海道ならではの美しい風景や、露天風呂や居酒屋など日本独特の風習が各所にちりばめられているため、この映画を観た中国の人たちの間で、映画に出てきた場所を巡る北海道ツアーが大ブレークしているのだそうです。

 更に、この「非誠勿擾」をきっかけとした北海道ブームをチャンスと見た日本政府は北京と上海のメディア6社の記者を釧路湿原、摩周湖、知床半島などを巡る体験ツアーに招待して特集記事を書いてもらったり、北京で映画館を借り切って北京市民や旅行業界関係者2000人を招待し、「非誠勿擾」を上映したあと北海道観光の説明会を開き、北海道旅行の魅力をPRしたりしました。このため、うわさがうわさを呼んで、映画も北海道旅行も更にブームになる、という良い循環が生まれているようです。

 ここのところ北海道の観光業はジリ貧状態が続いており、今年の「札幌雪まつり」に訪れた観光客の数は前年の70%程度、北海道にスキーに来る日本国内の観光客数もピーク時の45%まで下落していたのだそうです。

 今回、中国から吹いた神風を一過性のものに終わらせず、北海道に旅行に来た中国の人たちに「また来たい!」と言ってもらうためには、中国人が何に価値を見い出し、何が好きかを良く理解する必要があります。北海道の観光業界のみなさんには、この千載一遇のチャンスを生かすためにもぜひ中国人の思考方法を良く研究して頂き、中国人の北海道旅行ブームを北海道経済底上げの起爆剤として頂きたいと思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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