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「暴動民主主義」と「ネット民主主義」 (2009年08月31日)
衰退する中国の民主化運動に代わって、中国の事実上の民主化に大きく貢献していると思われるのが、「暴動」と「網民(わんみん、ネット市民)」です。私が勝手に「暴動民主主義」、「ネット民主主義」と呼んでいるものです。
まず、「暴動」は中国国内で年間9万件発生していると言われていますが、そのほとんどが共産党員の腐敗や、無茶苦茶な行政に端を発しています。このため、暴動で襲われるのはどこの地方でも決まって人民政府の建物か警察署です。 中国では田舎に行けば行くほど、町や村全体がグルになって腐敗しており、共産党員が私腹を肥やしているケースが多いようです。このため、腐敗や無茶苦茶な行政で被害を被って、警察や裁判所に訴えても、警察官や裁判官も腐敗党員とグルであり、逆に自分の身を危険にさらしてしまう可能性もあります。 その点、暴動を起こせば、マスコミが来て暴動の原因を調べて報道しますので、中国中の人たちに腐敗の実態を訴えることができます。そうなれば、共産党中央も問題を看過できなくなります。 一方の「網民」は最近、国の政策や裁判の結果を変える力を持ちつつあります。愛国であるがゆえに憂国の「網民」たちは、汚職をしたり、無茶苦茶な行政で市民を困らせている共産党員を人肉捜索(れんろうそうそう、人力ネット検索)で特定し、正義の名の下にインターネット上で吊るし上げ大騒ぎを始めます。 現在、中国のインターネット利用者は3億人。共産党中央もそれだけの人たちが見ているインターネット上で公然と批判をされている共産党員を処分しないわけにはいきません。 現在、中国の人たちは事実上、参政権を与えられていません。しかし、農村部の人は暴動に参加することによって、都市部の人はネットに書き込むことによって、国の政治に自分の意見を反映させることができるようになってきています。 最近では「暴動によって明らかになった共産党員の腐敗を、網民が人肉捜索で全国に暴露し大騒ぎを始める」というような「暴動民主主義」と「ネット民主主義」のコラボ(協働作業)も見られるようになってきました。 かなりいびつな形ではありますが、中国共産党に真正面から民主化を要求するよりも、よっぽど実効性のある民主化の方法なのではないか、と私は思います。 |
コラムニスト | 柳田 洋 |
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最終更新日 | 2012-04-27 |