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「政治改革の30年」 (2009年10月30日)

 今年の10月1日で中国は建国60周年を迎えました。

 1949年10月1日に毛沢東主席が天安門の上で建国を宣言してから最初の30年は、社会主義国家建設の理想を追い求めて、大躍進、文化大革命という政治運動に人民が翻弄された「政治闘争の30年」でした。

 そして、1978年に鄧小平氏が改革・開放政策を始めてからの次の30年は、自力更生から外資導入へ、計画経済から市場経済へと経済政策を大きく転換して高度経済成長を実現し、中国を国内総生産(GDP)で世界第2位の日本に迫る経済大国に押し上げた「経済発展の30年」でした。

 さて、次の30年は中国にとって「何の30年」となるのでしょう。

 30年後と言えば2039年。経済的にはアメリカを抜いて中国がダントツで世界最大の経済大国になっていることは確実であると私は断言できます。しかし、2039年の10月1日に中国共産党が長安街で建国90周年の祝賀パレードをやっているかというと、これについては自信がありません。なぜなら、今の中国の状態を見ると、中国共産党の一党独裁体制がこのまま更に30年も続くとはとても思えないからです。

 このことは中国共産党自身も自覚しているようで、党内では「還暦」を迎えた中華人民共和国の「寿命論」が真剣に語られているようです。

 中国共産党は今年で88歳、中華人民共和国は60歳ですが、国営新華社通信発行の雑誌によれば、「ソ連崩壊時のソビエト共産党は93歳、ソビエト連邦は74歳だった。ソ連の失敗は共産党と民衆との関係が良好でなかったのが大きな原因だ」とのことです。

 また、政府系シンクタンク・中国科学院は、所得格差の程度を示し、1に近いほど格差が大きい「ジニ係数」について「先進国は基本的に0.2-0.3の間だが、わが国は警戒ラインの0.4を超え0.45に達した」としています。ちなみに、明朝を滅ぼした李自成が17世紀前半に農民反乱を起こした頃のジニ係数は0.62、19世紀後半の清朝末期、社会を混乱に陥れた太平天国の乱が起こった頃のジニ係数は0.58だったのだそうです。貧富の格差、という点から見ると、現在の中華人民共和国もかなり危険な水域まで達していると言えそうです。

 こうした背景もあり、9月に開催された中国共産党第17期中央委員会第4回総会(4中総会)で採択されたコミュニケは悲壮感にあふれ「永遠に人民の信頼と期待に背かない」という言葉で締めくくられました。また、胡錦濤総書記も「党の執政地位は、現在あるからといって永遠にあるものではない」と繰り返し語り、危機意識をあらわにしています。

 こう考えていくと、今後、中国共産党が自ら変わって一党独裁体制を維持していくのか、それとも民衆が中国共産党に下野を促して、より民主的な政治体制になるのかはわかりませんが、どちらにしても中国にとって次の30年は「政治改革の30年」となるのではないでしょうか。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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