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クラッシュ必至?中国不動産バブル (2010年01月29日)

 一昨年からの世界的な金融危機にも関わらず、中国の不動産価格は上昇を続けています。

 中国政府は温家宝首相が「一部の地区で住宅価格の上昇ペースが速すぎる事態を、中央政府は非常に重大視している」と発言したり、関連税制や住宅ローン規定の変更などの施策を打ち出したりして、バブル状態と言われる不動産市場の沈静化に必死です。

 しかし、そんな中央政府の努力もむなしく、自分たちのことしか考えられない地方政府や銀行の地方支店が、中央政府の不動産価格抑制政策に協力しないため、不動産バブルは今後も膨らみ続け、中国政府が意図するような軟着陸は難しい、という見方が大勢を占めるようになってきています。

 中国の地方政府が中央政府の不動産価格抑制政策に従わない原因は、元を正せば1990年代の財政改革まで遡ります。

 1990年代の財政改革により権限を大幅に縮小された中国の地方政府は、軒並み財政難に陥っています。そうした地方政府が目を付けたのが、管轄区域内の公有地を売却して財政の赤字を補填する、という方法でした。公有地を売却すれば、すぐカネになりますので、地元の産業を振興したり、企業を誘致したりするよりずっと手っ取り早いのです。

 財政難に苦しむ地方政府にとって、公有地は言わば、振ればいくらでもカネが出てくる便利な「打ち出の小槌」です。中央政府の不動産価格抑制政策に協力することは、せっかく膨らんだ公有地の価値を自ら下げ、「打ち出の小槌」を振ったときに出てくるおカネを少なくしてしまうことになりますので、地方政府は不動産価格の上昇を「黙認」し、中央政府の不動産価格抑制政策には積極的に協力しない、ということのようです。

 また、銀行の地方支店も中央政府の不動産価格抑制政策に従っていないようです。

 中国政府は金融危機による景気の減速を食い止めるために、極端な金融緩和政策を打ち出してきました。このため、銀行には資金がだぶつき、銀行の本店は地方支店に厳しい融資ノルマを課し、何しろカネを貸し出さなければ自分の出世に響く地方支店の支店長は、中央政府が住宅ローンの頭金比率引き上げなどの施策を打ち出しているにも関わらず、それを無視して規定通りの頭金が準備できない人にも融資を行ってしまっているようです。

 こうした中央と地方の思惑の違いにより、今後も中国の不動産バブルは膨らみ続けそうな勢いですが、膨らんだバブルはいつかははじけます。バブルがクラッシュして多くの被害者を出さないためには、中央が地方の事情にも配慮をし、地方の協力の下、膨らんだバブルをゆっくりとしぼませていくことが必要なのではないかと私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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