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トヨタリコール問題、中国の反応は? (2010年02月27日)

 大規模リコール問題で揺れるトヨタ自動車。

 震源地のアメリカでは、政府や議会までもが絡んで、大変な問題になっています。また、日本でもリコールが発表され、同社は購入者への謝罪や説明に追われている、と聞いています。

 では、世界一の自動車大国となった中国ではどうなのか?

 トヨタ自動車は今回、中国でもアクセルペダルに不具合を生じる可能性があるとして、スポーツ多目的車(SUV)・「RAV4」7万5000台のリコールを中国当局に届け出ています。

 これに対し、中国自動車工業協会が発表した1月の新車販売ランキングでは、2009年通年で9位だったカローラも10位だったカムリもベスト10から姿を消しています。カローラやカムリのリコールは欧米諸国だけなのですが、「これだけ世界中で大騒ぎになっている中で、なんでわざわざトヨタ車を...」ということなのでしょう。

 しかし、トヨタ車の中国でのリコールは今回が初めてではありません。昨年12月にはオイルホースの劣化でエンジンオイルが漏れてエンジンが故障する可能性がある、ということで、レクサス4万3000台をリコール、8月には窓の開閉スイッチに不具合がある、ということで、カローラ、カムリなど68万8000台をリコールしています。

 そうしたリコールにも関わらず、昨年のトヨタの中国での自動車販売台数は、前年比21%も増加して、71万台となりました。

 トヨタ車の欠陥が原因の事故で中国人が死んだ、というような事件が発生していれば、トヨタ車の不買運動などものすごいことになっていたかもしれません。しかし、中国の消費者のトヨタのリコールに対する反応は「大損覚悟のリコールで事故の発生を事前に防いだ」ということで、むしろ肯定的なものが多いように思います。

 その背景には、「中国の自動車会社は不具合があっても、絶対に隠している」という国内企業に対する不信感があるようです。

 中国では2004年にリコール制度が始まりました。しかし、中国では2008年の時点で既に1.7億台の乗用車が市場で販売されていたにも関わらず、同年のリコール数は47回、回収台数はわずか53万台でした。回収された53万台以外の1億6千何百万台が、全く欠陥がないというのは、普通に考えてあり得ません。多分、中国では大問題になっていないだけで、欠陥車が大量に市場に出回っている、というのは容易に想像できます。

 こうしたこともあってか、先日、中国政府の機関である中国汽車工業協会の董揚常務副会長兼秘書長が出したコメントも「中国の自動車企業は、トヨタのリコール事件を教訓に、生産の過程で製品の質をより重視していくべきだ。中国の自動車企業はどのような時でも、どのような製品であっても、その品質を重視しなければならない」と、中国政府としてトヨタを批判する、というよりも、今回のトヨタのリコール問題を他山の石として中国の自動車会社は気を引き締めろ、というような論調でした。

 今回のリコール問題で、トヨタは中国マーケットで一時的に他社にシェアを奪われるかもしれません。しかし、いくら他社にシェアを奪われようが、自社の品質基準、リコール基準を守り抜き、「欠陥のあるトヨタ車は絶対に市場で流通させない」という筋の通った態度を貫き通せば、今回のリコール問題は中国マーケットではむしろ、トヨタ車の評判を上げる「けがの功名」となる可能性もあるのではないか、と私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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