WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

深刻化する中国の労働力不足 (2010年03月29日)

 今、中国では労働力不足が深刻化しています。

 中国の輸出は昨年12月、前年比+17.7%と2008年10月以来14ヶ月ぶりにプラスに転じました。これにより、中国輸出製造業の中心地である広東省の珠江デルタ地域では、再び生産が活発になってきているのですが、金融危機の影響で輸出が落ち込み生産が停滞していたときに仕事がなくて故郷に帰った農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)が帰ってこず、農民工への依存度が高い東莞市では100万人、経済特区を擁する深セン市では80万人の労働力が不足しているようです。

 このため、労働者の賃金水準も急激に上昇しており、法定最低賃金が月900-1000元(11700-13000円)の深セン市では、多くの工場がその約2倍に当たる1800元(23400円)まで賃金を上げ、労働者の確保を図っているようです。また、従業員募集時の年齢や学歴の条件も大幅に緩和され、これまでは就職が難しかった40歳代の人でも、簡単に職が見つかる状況になっているようです。

 中国内陸部の故郷に帰った農民工が、沿海部に帰ってこない理由は、今の中国は沿海部より内陸部の方が景気がよく、わざわざ故郷を離れて沿海部に出稼ぎに出てまで、職を探す必要がないからです。

 中国政府は昨年、金融危機による景気の減速を食い止めるために、4兆元(52兆円)の経済対策を内陸部を中心に投入しました。その結果、昨年の経済成長率は、上海市8.2%、浙江省8.9%、広東省9.5%と沿海部が軒並み一ケタ成長に止まったのに対し、内モンゴル自治区17.0%、重慶市14.9%、四川省14.5%と内陸部は10%台の力強い成長を見せました。

 また、沿海部の人件費の上昇に耐え切れず、安い労働力を求めて内陸部に工場を移転させる企業が増えたことも、内陸部の労働力需要を増加させる一因になっているようです。

 多くの農民工は「親の面倒を見られる地元で仕事が見つかるならば、わざわざ沿海部まで出稼ぎに出かける必要はない」と考えますので、輸出の復活で沿海部で労働力の需要が強まったにも関わらず、地元を離れて再度、沿海部に出稼ぎに行く農民工が少ない、ということのようです。

 私は中国で引越の仕事を始めて8年になりますが、今年初めて「春節で故郷に帰ったうちの引越作業員が、北京に帰ってこなかったらどうしよう」という心配をしました。それぐらい、今の中国の労働力不足は深刻なのです。

 しかし、私のそんな心配は杞憂に終わり、おかげさまで当社の引越作業員は1人も欠けることなく北京に戻ってきて、仕事に復帰しています。故郷にも仕事の口があったであろうにも関わらず、帰ってきてくれた当社の引越作業員のみなさんには、心から感謝、感謝です。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
参照URL
最終更新日 2012-04-27

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧