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中国版国民所得倍増計画 (2010年09月01日)

 中国政府は先月から、5年で国民の所得を倍増させる計画などを掲げた所得格差是正策の草案を地方当局や国有企業の幹部に配り、意見を求めているのだそうです。

 この所得倍増計画は、地方政府が各々定める最低賃金基準を5年間で倍に引き上げるなどの手段で実現する予定で、2011年から始まる第12次5カ年計画に盛り込む方向とのことです。

 5年で倍、ということは、年間15%ずつ所得が上がる、ということですから、消費者物価指数(CPI)はもちろん、現在の経済成長率をも大幅に上回るものすごいペースです。

 この計画が実現すれば、2015年の中国の一人当たりの国内総生産(GDP)は、現在の4,000ドルから8,000ドルに、国全体のGDPは日本の倍、米国の2/3ぐらいになります。

 更に、この草案の題名が所得格差是正策であったり、実現の方法が最低賃金の引き上げであったりすることからも予想できるように、所得の上がり方は全国民一律ではなく、ブルジョワ階級や中産階級の人たちよりも、プロレタリア階級の人たちの方が所得の上がり方が平均値である年間15%よりも更に大きくなりそうですので、中国の食品、衣服など一般消費財のマーケットは、2011年からの5年間で飛躍的に拡大することが予想されます。

 この中国の所得倍増計画、モデルとなっているのは光栄なことに、1960年に日本の池田内閣の下で策定された国民所得倍増計画なのだそうです。いつも思うのですが、中国は成功例も失敗例も全て含めて、実に良く日本の事例を研究しています。

 但し、日本の国民所得倍増計画と違うところは、日本の国民所得倍増計画が輸出増進による外貨獲得を主要な手段として国民所得=国民総生産(GNP)を倍増させる、という方法を採ったのに対し、中国版国民所得倍増計画は、先に国民所得を強制的に引き上げることによって国内消費を喚起して、経済構造を人件費コストの低さを武器にした輸出主導から国内消費を主力エンジンとする内需主導へと転換させようとしているところです。

 そして、この計画を打ち出す背景には、最近、中国各地で相次いでいるプロレタリア階級の人たちによる賃上げ要求ストもあるようです。中国共産党は国民の圧倒的多数を占めるプロレタリア階級の人たちの支持を集め、国内情勢が安定することによって更に経済が成長し、プロレタリア階級の人たちの収入が上がって、中国共産党への支持が更に確固たるものになる、というポジティブなスパイラルを描こうとしているように見えます。

 中国版国民所得倍増計画。この計画は、私たち中国でビジネスをする者にとっても、非常に大きなチャンスです。所得倍増の5年間は、中国が地球上に残された最大且つ最後の巨大マーケットとして全世界の注目を浴びる5年間になるのではないか、と私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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