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中国民衆は政治改革をどう考えているのか? (2010年12月31日)

 先日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報に「中国民衆は政治改革をどう考えているのか?」という興味深い記事が掲載されました。

 記事によれば、環球世論情勢調査センターが、中国7都市の市民を対象にアンケートを実施したところ、78%の人が「政治改革は当然必要」と回答したのだそうです。

 しかし、政治改革の内容については、「欧米式の民主政治体制を推進するべき」と答えた人が15.5%に止まった一方、「中国の特色ある民主政治を建設するべき」という回答は57%に達しました。

 また、「政治改革で注意すべき問題」という設問では、「中国の基本的国体の下で改革推進を堅持すべきであり、完全な欧米化はさけるべき」が70%、「社会の安定を最優先するべき」が69%と多数を占めました。

 このアンケートの結果をまとめると「政治改革は必要だが、欧米式の民主主義をそのまま導入するのではなくて、社会の安定を保ちながらゆっくりと中国独自の民主主義を形作っていくべき」ということになります。アンケートをしているのも、記事を載せているのも、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報ですので、あまり説得力はないのですが、それでも私個人的には、このアンケートの結果は今の中国の大多数の人たちの考え方を代表しているのではないかと思いました。

 民主主義を絶対善と信じて疑わない日本を始めとする西側先進国は、中国共産党による一党独裁を悪と決めつけ、中国に欧米式の完全民主主義の導入を迫っています。先日も中国で投獄されている民主活動家がノーベル平和賞を受賞して物議を醸しました。

 かく言う私も、日本で「民主主義=絶対善」という教育を受けてきましたので、初めて「悪の独裁国家・中国」に来たときには「中国の国民は参政権も与えられず、独裁者に抑圧された暗い毎日を送っている」と思い込んで来ました。しかし、中国に住んでわかったのは「人は参政権がなくても結構幸せに暮らせる」ということです。

 歴史に「たら・れば」はないのですが、もし、今回ノーベル平和賞を受賞した民主活動家も参加した1989年の天安門事件で、中国政府が学生たちの民主化要求を受け入れて中国が民主化していたら、これだけ多くの人が幸せに暮らせる国になっていたのでしょうか。私にはどうしてもそうは思えません。民主化後の混乱の後も、近視眼的でポピュリズムな政策が増えて、カオス状態が続いたのではないでしょうか。

 もちろん、一党独裁体制には汚職や無茶苦茶な行政という弊害がありますので、政治改革は進めていかなければならないと思います。しかし、アンケートの回答にもある通り、その政治改革は、社会の安定を崩して、多くの人を不幸のどん底に陥れるような形であっては絶対にいけない、と私は思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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