WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

中央の政策に反旗を翻す地方 (2011年04月30日)

 インフレ退治と不動産価格抑制。

 この2項目は、一般庶民の不満を和らげるために、現在、中国政府が必死になって取り組んでいる最重要課題ですが、中央と地方の思惑の違いから、中国政府の政策がなかなか効果を上げられない状況が続いているようです。

 中国の中央銀行である中国人民銀行の瀋陽支店長・王順氏は、先日「地方当局が経済成長加速と投資拡大を目指す中で、わが国の銀行融資抑制策は困難に直面している」という懸念を示しました。

 中国人民銀行は現在、インフレ退治のために利上げ、預金準備率引き上げ、貸し出し抑制などの金融引き締め政策を行っていますが、その一方で、二ケタ成長を維持しようとしている地方当局は投資拡大に躍起になっており、銀行から融資を受けたお金を、新規のプロジェクトにどんどんつぎ込んでいるのだそうです。

 王順氏によれば、瀋陽支店がある遼寧省は今年、固定資産投資を20%も増やすことを目標としており、そのための資金の大半を銀行融資で賄う計画である、とのことです。

 また、中国政府は不動産価格を抑制するため、全国各都市に不動産価格抑制目標の設定を指示していますが、これまでに抑制目標を公表した都市は全国600以上の都市の中でわずかに40都市、率にして6%強に止まっています。

 更に、抑制目標を公表した都市も、抑制目標を現状維持又は現状よりもマイナスに設定したところは、中国政府のお膝元である北京市のみ。他の都市は最も厳しい抑制目標を設定した甘粛省蘭州市でも現状プラス9%であり、それ以外の都市は軒並み10%前後のプラス、という、とても「抑制」とは言い難い目標の設定となっています。

 中央の政策に反旗を翻す地方。

 同じ中国共産党の党内でこうした矛盾が発生している大きな原因の一つは、地方財政が破綻の危機に瀕していることにあります。

 中国の税金には国が徴収する国税(ぐぉしゅえ)と地方政府が徴収する地税(でぃーしゅえ)がありますが、現在の税制では地税の割合が45%程度であるにも関わらず、地方政府の財政負担の割合は75%にも上るそうです。

 これにより、赤字の地方政府が続出、全国の地方政府の負債総額は6兆元(75兆円)と、年間地方財政収入の175%という巨額に達しているため、多くの地方政府が財政破綻を防ぐために、銀行融資を利用した積極的な投資によって税収を増やしたり、高騰する不動産価格を利用した公用地売却によって収入を得たりして赤字の穴埋めをしている、ということであるようです。

 中央が打ち出しているインフレ退治と不動産価格抑制は非常に正しい政策です。しかし、これらの政策を地方政府の協力を得て推し進めていくためには、国税地税比率の見直し、または、国税の地方政府への還付などの方法で、地方政府の財政負担に見合った収入を確保させるところから始める必要がありそうです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
参照URL
最終更新日 2012-04-27

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧