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終焉を迎える「コンテンツ無料天国」 (2011年06月01日)

 今、中国では本も音楽もテレビドラマも映画も、全てインターネット経由で無料で見たり聞いたりできる状態になっています。

 これは中国のGoogleと言われる百度(ばいどぅ)や中国のYou Tubeと言われる優酷(ようくー)が、著作権を無視した利用者のアップロードに対して、見て見ぬふりを決め込んでいるからです。

 しかし、この著作権を無視した「コンテンツ無料天国」も、終焉への第一歩を踏み出したようです。

 先日、百度は同社の書籍共有サイト「百度文庫」に違法掲載されていた小説などの文学作品を一斉に削除、280万点以上あった掲載作品は3日ほどで800点以下に急減しました。

 これは自らの作品の著作権が侵害されているとする中国の著名作家50人が、百度に対して謝罪と違法掲載の中止を連名で要求、最終的に百度会長の李彦宏氏が「適切に管理できないようならサイトを閉鎖する」と明言、3日以内に問題のある作品を徹底的に削除することを約束したことによるものです。

 また、百度はその後、中国音楽著作権協会との提携合意も発表、音楽を無料でダウンロードし放題の音楽ファイル共有サイトの見直しにも動き出しました。

 百度は以前から度々、コンテンツ業界より著作権保護の要求や提訴を受けていましたが、「悪いのはコンテンツを違法にアップロードしている利用者なのだから、文句はその人たちに言ってくれ。我々は検索機能を提供しているだけだ」という強気の主張を繰り返していました。

 それがここに来て一転、積極的に著作権を保護する姿勢に変わったのはなぜなのか?

 中国紙・第一財経日報は「若手作家・韓寒氏がアメリカの新聞に投稿した本件に関する批評が、アメリカ・ナスダック市場に上場している百度には効いたのではないか」と分析しています。百度株はPER(株価収益率)が100倍前後とナスダック市場で大人気ですが、アメリカ政府が中国政府に対して再三改善を要求している、中国の著作権侵害の片棒を百度が担いでいることを多くのアメリカ人が知れば、「百度株不買運動」が起き、株価が急落する可能性があったのかもしれません。

 また、国家著作権局幹部が中国メディアに対して「長期的な発展のために、百度は今決断すべきだ」と語っているように、中国政府から百度に圧力がかかった可能性もあります。「今までは情報統制に協力してくれる見返りとして、著作権の問題は大目に見て80%以上の圧倒的な市場シェアを取らせてあげてたけど、もうそろそろいいだろう」ということなのでしょう。

 どちらにしても今回の百度の方針転換は、優酷など他の中国のIT企業のビジネスモデルをも根底から揺るがすことになるでしょう。今後中国では「違法な無料コンテンツでたくさんの人を集めて、その人たちへの広告で儲ける」というビジネスモデルは終焉を迎え、そうしたビジネスモデルに頼って成長してきた中国のIT企業は、合法的な方法でお客さんを集める方法を必死になって考える必要に迫られるのではないかと思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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