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スタグフレーションに陥った中国経済 (2011年07月31日)

 高度経済成長を続けてきた中国経済。しかし、ここのところその雲行きがあやしくなってきました。

 消費に関しては、5月の新車販売台数が2カ月連続で前年同月比マイナスを記録。家電製品の販売も住宅取引の減少で鈍化が続き、消費に息切れの気配が見られるようになってきました。

 鉱工業生産の伸びは鈍化傾向が強まり、中国工業・情報化省は「工業生産は一段と減速する可能性がある」と警戒を強めています。東日本大震災の影響で、日本からの部品・素材の輸入が停滞していることも、伸び鈍化の一つの原因になっているようです。

 不動産開発投資は依然活発ですが、住宅取引の減少で在庫圧力が高まっています。住宅価格は高止まりしたままですが、中国大手証券会社幹部によれば「価格が一旦下落に転じれば、投資減少や不良債権の増加を招く」という懸念が浮上しているとのことです。

 輸出は信用不安が長引く欧州、東日本大震災で打撃を受けた日本に加え、米国でも景気の先行きに不透明感が強まり、今後の輸出に及ぼす影響が懸念されています。

 消費もダメ、投資もダメ、輸出もダメ、ということになれば、中国経済は経済成長のエンジンを全て失うことになり、急激に失速してしまう可能性もあります。

 しかし一方で、インフレによる物価高は一向に収まる気配がなく、CPI(消費者物価指数)は5月が前年同月比5.5%増と3カ月連続で5%を超え、6月は6%を超えることが予想されています。

 このため、中国政府はインフレ退治のための金融引き締め策を続行、今月に入って今年3度目となる利上げを実行し、1年ものの定期預金金利は3.50%、貸出金利は6.56%となりました。また、預金準備率の引き上げも毎月のように行っており、今では21.5%と過去最高水準に至っています。

 ただ、インフレ退治ばかりに躍起になって金融を引き締め続けていると、既に雲行きがあやしくなってきている中国経済に追い討ちをかけてしまうことにもなりかねません。実際、体力の劣る中小企業の中には、高金利により利益がなくなってしまったり、融資原資が少なくなった銀行の貸し渋り、貸し剥がしに遭って、倒産するところも出てきているようです。

 今の中国経済は、インフレは収まらないのに景気が悪くなる、という典型的なスタグフレーションの状態に陥っています。

 この状態から抜け出すためには、やはりインフレの最大の原因となっている人民元の為替レートを高めに誘導し、それによって立ち行かなくなった輸出産業から放出された労働力は、公共投資などで吸収する、といった、抜本的な産業構造の改革が必要となるのではないかと思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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