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中国で深刻化する人手不足 (2011年08月31日)

 中国で人手不足が深刻化しています。

 中国人的資源市場情報監測センターによれば、今年第1四半期の全国101都市の求人倍率は1.07と、リーマンショック前の好景気に沸いた2007-2008年の0.98を上回り、過去最高を記録したのだそうです。

 中でも技術工の不足は深刻で、高級技師の求人倍率は1.89、技師は2.19に達しているそうです。また、中国では最近、若年層で単純労働を敬遠する傾向が強まり、普通工も実際にはかなりの人手不足に陥っているようです。

 かつての「世界の工場」の中心地、広東省の珠江デルタ地域では、電器製造、②機械加工、③服飾・製靴の3業種で特に人手不足が深刻化しており、調査を受けた企業の実に90%が「労働力不足に直面している」と回答したのだそうです。

 求人倍率が1を超える、ということは、理論的には求職者が選り好みをしなければ、全員が何らかの職に就け、失業率がゼロになることを意味します。数年前までは「農村部に無尽蔵の余剰労働力を抱えている」と言われていた中国ですが、アッと言う間に余剰労働力が底を突いてしまった、という感じです。

 中国ではなぜこんなに人手不足になっているのか?

 中国政府のシンクタンク・中国社会科学院の人口・労働経済研究所によれば、経済成長の伸びに労働力の供給が追いついていないことが最大の原因である、とのことです。

 また、今まで労働力の供給基地としての役割を果たしてきた内陸部が、好景気によって自ら大量の労働力を必要とするようになってしまったことも、中国全体の人手不足に拍車を掛けているのだそうです。

 そして、中国人口学会によれば、中国の15-59歳の労働力人口は2011-15年にピークに達し、その後は減少に転じるとのことですので、人手不足は今後、更に深刻化することが予想されます。

 この人手不足問題を解決するためにはどうしたら良いのか?

 経済成長の速度を緩めれば、一時的には人手不足は解消するかもしれません。しかし、そうすると今度は、今後年間800万人のペースで増え続け、2015年には2億人を突破すると言われている高齢者を養うことができなくなってしまいます。

 となると、中国政府は経済成長を続けながら人手不足を解消するという非常に難しい舵取りを迫られることになります。

 解決方法としては、
 ①機械化、自動化で単位生産当たりの必要労働力を減らす
 ②産業を高付加価値化して、労働者1人1人が生み出す付加価値を上げる
 ③60歳以上の高齢者にも働いてもらう
 ④外国から労働者を受け入れる
 などの方法があると思われますが、実際には、こうした方法を総動員して、経済成長を続けながら人手不足を解消するという難題を何とか解決していくしかないのではないかと思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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