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日本の外から見たTPP (2011年11月30日)

 国論を二分した結果、「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」という実質的な結論の先延ばしに至ったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。

 日本の外から連日のように報道されるTPP関連のニュースを見ていましたが、正直なところ「そんなに大騒ぎするほどのことなのか」と思ってしまいました。

 TPPは日本が参加した場合、加盟国の総GDP(国内総生産)の90%以上を日本とアメリカが占める、実質的な日米FTA(自由貿易協定)ですが、両国のGDPに占める輸出の割合は、日本が11%、アメリカは7%でしかありません。日米両国の経済は現状、ほとんどが内需で回っているのです。

 更に、日本の輸出先は、2008年まではアメリカがトップでしたが、金融危機後の2009年からは中国がそれに取って代わり、2010年の割合は中国の19.4%に対し、アメリカは15.4%となっています。日本が真剣に検討すべきなのは、実質日米FTAであるTPPではなくて、最大の輸出先である中国との日中FTAなのではないでしょうか。

 しかし、日中FTAに関しては、今まで中国の方がむしろ積極的であって日本は消極的です。これは中国のGDPに占める輸出の割合が25%と、まだ比較的高いためだと思われますが、中国は今、この輸出の比率を下げて、消費による内需主導の経済成長を目指すべく、国を挙げて経済構造の改革をしています。このため、この比率は今後、どんどん下がっていくことが予想されます。

 中国が経済構造改革を成功させて、「世界の工場」から「世界の市場」へと脱皮した後は、世界一魅力的な市場をタダで外国に開放してあげる必要はありませんから、日中FTAなど締結する必然性がなくなります。日中FTAを締結できるとしたら、中国が経済成長をまだ輸出に頼っている今しかないのです。

 TPPはアメリカの対中牽制という政治的な意味合いが濃いと聞いていますので、日本は同盟国としてむげに断ることはできないとは思いますが、経済的には日中FTAの方が日本の将来の国益に寄与する度合いが高いのではないかと思います。更に、中国は今後5-10年で世界最大の農産品輸入国になる見込みですので、日本の農業を潰すどころか、救世主になる可能性さえあります。

 こうなったらいっそのこと、実質日米FTAであるTPPと日中FTAを同時に締結したらどうでしょう。そうすれば、政治的には米中両国における日本のプレゼンスが大幅に増し、経済的にも「米中間の中継貿易」という新たな産業が生まれて、日本経済の活性化に大きく寄与するのではないでしょうか。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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