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終焉を迎える中国の高度経済成長 (2012年02月01日)

 先日、中国政府のシンクタンク・国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松副所長は、2012年は中国経済が軟着陸する年となり、高度成長期から中成長期への転換期に入るであろう、との見通しを語りました。

 高度経済成長の定義はいろいろあると思いますが、仮にGDP(国内総生産)が前年比で10%前後伸びることを高度経済成長と言うとするならば、中国はもうそうした状態に戻ることはなく、今後はGDP成長率8%前後、CPI(消費者物価指数)の上昇率は4%前後を維持していくであろう、とのことです。

 中国の経済成長率は2001年は8.3%でしたが、2002年以降は9%から12%の間を維持、昨年2011年も後半、インフレ退治のための金融引き締め政策で景気が後退しましたが、それでも通年では9.2%と9%台を確保しました。

 しかし、2012年は多くのエコノミストたちが8%台に落ち込むことを予想、中国の経済成長率は10年ぶりに9%を割り込むことになりそうです。

 終焉を迎える中国の高度経済成長。

 ただ、日本を抜いて世界第2位の経済大国となった中国が、中成長期に入るのはある意味当たり前と言えるかもしれません。なぜなら分母が大きくなった中国経済が、いつまでも以前のように10%成長を続けていけるわけがないからです。実際、経済規模が小さかった10年前の10%成長と現在の8%成長では、実額ベースでは後者の方が4倍以上も大きいのです。

 また、世界的な金融危機で揺れた2009年、中国政府は失業者を増加させないために経済成長率8%を死守するという「保八(ばおぱー)」政策を展開しましたが、今後は、中国の労働力人口の増加率はどんどん鈍化し、2017年前後には減少に転じる見込みですので、雇用創出のために高い経済成長率を維持する必要もなくなります。

 経済成長率8%、CPI上昇率4%。

 この状態が続けられれば、中国の国民はその差の4ポイント分、毎年豊かになっていくことができますので、今までのような爆発的に金持ちになる感覚は持てなくても、将来に希望を持って暮らしていくことはできるのではないでしょうか。

 中国経済が高度経済成長期を終えて安定的な中成長に落ち着くことは、国内情勢の安定という観点から見ても、悪いことではないのではないか、と思います。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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