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2030年の中国 (2012年04月27日)

 先日、世界銀行と中国国務院発展研究センターは、共同レポート「チャイナ2030」を発表しました。

 レポートは、現在の中国を「中所得国から高所得国に移行する発展の転換点」にあると指摘、今後、経済成長が徐々に鈍化していく中で、経済構造改革に成功すれば、2030年の中国は高所得国の仲間入り、経済構造改革に失敗すれば、2030年の中国は成長が急減速し、財政危機や金融危機に陥っている恐れがあると警告しています。

 これはいわゆる「中進国のわな」と言われるものです。人件費が低いときには、値段が安い製品を大量に海外に輸出することにより、低所得国から中所得国に昇格するのは比較的簡単なのですが、低い人件費による輸出に頼った経済構造を改革せずにいると、やがて経済の発展によって人件費が上昇し国際競争力が低下、中進国のままで経済成長が止まり、
深刻な経済危機を招く、ということです。レポートも「今まで多くの国が急速な勢いで中所得国に成長したが、高所得国へ発展できた国はわずかだ」と指摘しています。

 中国は中所得国と高所得国の間にある大きな溝を飛び越えて、2030年になっても経済成長を続け、健全な財政状態を保っていることができるのか?

 その鍵を握るのが、経済成長の主力エンジンを輸出や投資から消費へ切り替える、という中国の経済構造改革です。具体的には「政府や国有企業の役割見直し、経済活動への国の干渉低減、民間活力の利用、土地・労働改革、貧富の差を是正するための社会保障制度整備、財政の地方分権」などをレポートは提言しています。

 今までの中国は国家資本主義でうまくいっていましたが、今後、民間の活力を利用しなければ「中進国のわな」を避けることはできない、ということです。

 そして、レポートは「中国が「中進国のわな」を避けるに当たっての最大のリスク要因は、経済構造改革を妨げる既得権益層の存在だ」としています。このレポートは中国政府傘下の研究機関が絡んでいますので「既得権益層」という回りくどい言い方をしていますが、わかりやすく言えば「中国共産党のアホ幹部」です。アホ幹部が自分の目先の利益のために権力を手放さなければ、経済構造改革は遅れ、中国は「中進国のわな」にかかり、奈落の底に落ちていくのです。

 ゼーリック世界銀行総裁は、レポート発表後の北京での講演で中国政府に対し「中国の指導者は何をすべきか分かっている。必要なのは行動だ」と呼びかけました。これもわかりやすい言葉に翻訳すると「中国共産党中央は私利私欲のために中国を奈落の底に突き落とすアホ幹部を一掃して、中国の明るい未来のために経済構造改革を断行するべきだ」ということです。

 中国共産党がアホな身内の首を切らず、中国を奈落の底に突き落とすのならば、中国の国民は祖国の未来のために、中国共産党本体の首を切るしかないのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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