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一人っ子政策の堅持を決断した中国 (2012年06月01日)
一人っ子政策。
これは1979年に始まった中国の人口抑制政策で、33年が経過した現在でもまだ続行中です。現在では夫婦が共に一人っ子である場合、及び、農村戸籍の夫婦の第1子が女児であった場合は、第2子の出産を認めるよう規制が緩和されていますが、それでもこの一人っ子政策の人口抑制効果は絶大で、中国では2015年前後から15-64歳の労働力人口が減少に転じることが予測されています。 一方で中国の60歳以上の高齢者人口は、毎年800万人増加しており、2015年には2億人を突破することが予想されています。付加価値を生み出す労働力人口が減少に転じ、養わなければならない高齢者人口は毎年800万人も増えるとなると、高齢者を養うための原資が足りなくなるのは火を見るより明らかです。このため中国では、一人っ子政策を廃止して、若年層の人口を増加させるべきなのではないか、という議論が常になされてきました。 しかし、先日、中国国務院が発表した国家人口発展第12次5カ年計画(2011-2015年)では、一人っ子政策を国策として堅持し、2015年の総人口を13億9000万人以下に抑える、という方針が打ち出されました。 世界最大の人口を擁する中国の人口増加は、限りある地球の資源や食糧の大量消費につながります。中国は自国のことだけを考えれば、一人っ子政策を廃止して、労働力人口を再び増加に転じさせ、高齢化社会を乗り切るべきですが、そこをあえて一人っ子政策を堅持するいばらの道を選びました。私個人的にはこれは、中国の世界に対する最大の貢献なのではないかと思っています。 では、労働力人口が減少に転じる中で、どうやって年間800万人も増加する高齢者を養っていくのか? その答えは「労働者人口1人当たりが生み出す付加価値を上げる」です。 中国の2010年の時点での高齢者扶養比率、すなわち労働力人口に対する高齢者人口の比率は19%で、労働力人口5人で高齢者1人を養っている状態でした。しかし、2020年には労働力人口3人で高齢者1人を、2030年には労働力人口2.5人で高齢者1人を養うことになることが予測されています。 少ない労働力人口で増加する高齢者を養っていくためには、1人1人の労働力人口がより高い付加価値を生み出す必要があります。 一人っ子政策の堅持を決断した中国にとって、自国産業の高付加価値化は、国の将来を左右する、死活的に重要な課題なのです。 |
コラムニスト | 柳田 洋 |
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最終更新日 | 2012-04-27 |