WJFCについて 講座・セミナー申込み 過去の講座オンデマンド配信 会員サービス 異文化人材データバンク コラム

コラムの詳細

中国不動産市場に回復の兆し (2012年07月31日)

 景気減速傾向が強まる中国。中国政府は利下げなどで景気の下支えに必死ですが、そんな中、中国の不動産市場に回復の兆しが出てきています。

 不動産情報サイト・捜房網の調査によれば、今年5月の不動産価格は調査対象40都市のうち、34都市で不動産販売額が前月を上回ったのだそうです。中でも広州の新築物件の販売は前月比52%も増加、北京、成都、深センなどでも軒並み前月比30%を超えたとのことです。

 この景気減速局面で、どうして不動産市場に回復の兆しが出ているのか?

 それは、どうも中国の地方政府が、中央の不動産価格抑制政策に従わず、勝手に緩和政策を打ち出しているためらしいです。

 中国の不動産価格は2007年までものすごい勢いで上昇しました。2008年のリーマンショックの後、株価は大幅に下落しましたが不動産価格は高止まりを続け、金融危機後は中国政府の大規模な財政出動による景気の下支えを背景とするインフレで、不動産価格は再び上昇を始めました。

 こうした不動産バブルに対し、中国政府は不動産価格抑制政策を開始、温家宝首相は「中国の不動産価格が合理的水準に落ち着くまで、抑制の手は絶対に緩めない」という強い決意で抑制政策を継続していました。

 しかし、2011年後半以降、北京など30都市が、住宅初回購入者を対象としたローン金利優遇や税金、手数料の引き下げなど、不動産取引規制を緩和、地方政府の裁量により、国家の不動産価格抑制政策が実質骨抜きにされる状態となりました。温家宝首相は今年3月、不動産価格が高止まりしている現状について「政策が中南海を出ない」と発言、北京の中南海にある中央政府が政策を決定しても、地方の党幹部にはその意図が浸透せず、地元の金融業界、不動産業界とグルになって政策を骨抜きにしてしまうことを嘆きました。

 不動産価格の高騰でマイホームを買えない一般庶民の怒りを和らげて、国内情勢の安定を図りたい中央政府。一方で、不動産価格を上昇させて、公有地を少しでも高く売却し、赤字の財政の穴埋めをしたい地方政府。

 この中央と地方のねじれを解決するためには、税収の割には負担が異常に重い、という地方政府の財政問題を抜本的に解決する必要があるのではないかと思われます。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
参照URL
最終更新日 2012-04-27

 

意見投稿・レビュー

採点
コメント

※投稿には当フォーラムの会員登録が必要です。 ログインはこちら

今までのレビュー一覧