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禁書ーー法律や命令で特定の書籍の発行・輸入・・・ (2007年03月04日)

 禁書ーー法律や命令で特定の書籍の発行・輸入・閲覧・所持を禁止すること。また、その書籍(大辞泉)。日本でも江戸幕府がキリシタン書の輸入を禁止するなど、禁書の歴史があるが、中国の禁書の歴史はもっと長く、文化的な被害も大きかった。

『中国禁書大観』(1990年・上海文化出版社)という700ページ余の大著がある。始皇帝の「焚書坑儒」(ふんしょこうじゅ)から清朝までの約7千種の禁書目録が収録されており、歴代王朝がいかなる基準を以って禁書を設定したかについても克明な分析がなされている。しかし残念ながら北京大学教授である著者には禁書が現在の中国でも依然続いていることには触
れる勇気はなかった。どころか、触れたら『中国禁書大観』そのものが禁書になっていただろう。

中国の出版社は約600社あるがすべて「国有企業」となっており、監督省庁は国務院新聞出版総署である。また、中国共産党中央宣伝部(中宣部)がその上に君臨し、時折出版の「不許可」を発令している。北京大学新聞メディア学院助教授焦国標氏が書いた『中央宣伝部を討伐せよ』(坂井臣之助訳・草思社)ではその「不許可」のメカニズムを暴露しているが、当然この本も
「不許可」の対象となってしまった。

ところが、風吹けば桶屋が儲かるともいうことだろうか、この禁書と「不許可」によって香港の出版業が儲かっている。年々増加する大陸の香港観光客が大陸の禁書を土産に買うようになったのである。北京在住の作家閻連科が書いた、毛沢東時代を風刺する小説『人民のために奉仕する』は中宣部の「不許可」を食らったが、その翌月に香港の書店をはじめ、大陸観光客が訪れる名所のお土産店に平積みにして販売されるようになった。帯のキャッチフレーズもずばり「2005年大陸第一禁書」だった。

コラムニスト 文 彬 070331bun
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最終更新日 2011-08-20

 

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