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中国ではなぜインフレが起きないのか・・・ (2007年03月04日)

 今年2月、中国の外貨準備高は8,536億ドルに達し、日本を抜いて世界一になりました。

外貨が貯まる、ということは、貯まった分だけ人民元が発行されている、普通、これだけ外貨準備高が増えれば、市中に人民元があふれ、相対的に人民元の価値が下がって、いわゆる過剰流動性によるインフレを引き起こし、物価が上昇するはずです。しかし、現状、中国では、投機対象とされている一部の不動産などを除いては、物価は上がっていません。

私、マクロ経済はど素人なのですが、ど素人なりに考えると、これは、中国の過剰な流動性が消費ではなく、不動産などへの投機に回っているので、物価が上がらないのではないか。市中に出回るはずの人民元が、マンションの壁に塗り込められて固定化されてしまったため、インフレが起こっていない、という感じでしょうか。

もちろん、中国も金持ちがどんどん増えていますので、消費も上向きになっているはずなのですが、増産や生産性の向上などで十分にカバーできる程度しか消費が増加していないため、モノの不足は起こらず、その結果、物価の上昇が起こっていないのではないでしょうか。

今、中国政府が最も恐れているのは、アメリカでも台湾でもなく、国民の不満です。インフレによって、日本の高度経済成長期の狂乱物価のような物価高を招けば、国民の暮らしは苦しくなり、中国各地で散発的に起こっている反政府暴動が、全国規模に広がることも十分ありえます。ですので、中国政府としては、インフレによる物価の上昇は、なんとしてでも防がなければなりません。

インフレを防ぐ特効薬は、人民元の為替レートを高くすることです。人民元高になれば、輸出が減り、輸入が増えるため、外貨準備高は減り、その分、市中に出回る人民元も減るため、過剰流動性の問題は解決し、インフレも物価高も回避できます。

しかし、「世界の工場」中国には、輸出型の生産工場が沢山あり、その工場で働いている人が沢山います。急激な人民元高は、そうした輸出型生産工場に壊滅的な打撃を与え、多くの失業者を発生させるため、社会を混乱させる原因となりかねません。

過剰流動性がマンションの壁に塗り込められて固定化され、インフレが抑えられている間に、国内の産業構造を輸出型から内需型に転換し、人民元の相場が高くなっても良いように備える、というのが、中国政府の思惑なのではないでしょうか。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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