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カメの歩みの人民元・・・ (2007年03月04日)

 昨年の前半まで「人民元の切り上げ」は世界経済の中で、最もホットな話題でした。

アメリカは不当に安い人民元に支えられた中国製品の流入によって、自国の産業が壊滅的な影響を受けているとして、中国に対し強硬に人民元の切り上げを求め、日本人は「これから人民元は大幅に切り上がる」ということで、日本円や米ドルの資産を人民元にシフトすべく、中国の銀行に人民元の口座を持とうとしたり、中国の不動産に投資したりしました。

しかし、2005年7月に中国人民銀行が、人民元の対米ドルレートを約2%切り上げた後は、「人民元の切り上げ」は話題にも上らなくなってしまいました。人民元で大儲けできると考える人はほとんどいなくなり、人民元の切り上げを見込んで中国の不動産を買った人は、政府の規制や投機筋の動きによって、人民元の切り上げ幅よりもはるかに大きな幅で乱高下する不動産価格に翻弄されました。

みんなから忘れ去られてしまったかのような人民元ですが、実はその後も「ウサギとカメの競争」のカメのように、ゆっくりとゆっくりと着実に切り上がりを続け、今回、ついに香港ドルに追いつきました。

香港ドルは1米ドル=7.75-7.85香港ドルの範囲で変動する、米ドルペッグ(連動)制を導入しています。2005年7月以前の人民元は、1米ドル=8.28人民元の固定レートでしたので、当時香港に行くと、たいだい「100香港ドル=105人民元」というレートで兌換がされていました。

これが05年7月の約2%の切り上げ後、人民元は管理フロート制の導入により16カ月かけて約3%上昇、切り上げ前と比べると人民元は対米ドルで約5%上昇したことになり、5%高かった香港ドルに追いつくことになったのでした。

11月末には、中国本土の銀行での現金交換レートが「100香港ドル=99.87人民元」と香港ドルと人民元の価値が逆転する現象も起きました。人民元は今後も上昇が続くと見られており、香港ドルが幅広く流通する広東省深セン市では、香港ドルでの支払いを拒否する商店が出てきているそうです。

カメの歩みでゆっくりとながら着実に切り上がる人民元。

一気にドカンと大儲けできるわけではありませんが、長期的な視点から見れば、やはり、手持ちの資産は人民元建てに換えておいた方がよいのかもしれません。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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