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不動産投資という名の「チキンレース」 (2007年03月04日)

 先日、中国で税務当局が公布した不動産税制に関する通知が、新たな土地新税と勘違いされて、株式市場で不動産株がストップ安となる、という事件が発生しました。

この通知は、国家税務総局が1994年に施行した土地転売益に係る「土地増値税」について、執行方法や税率などの基準を明確にしたものでした。しかし、これが不動産開発業者への新たな負担を強いる土地新税と勘違いされ、公布翌日の上海市場では、不動産株が急落、ストップ安まで売り込まれました。

これを見て慌てた国家税務総局は、ホームページで「これは土地新税ではない。負担は従来と変わらない」と説明したり、国営放送のテレビニュースに担当者を出演させて、その真意を説明させたりと、対応に大わらわとなりました。

今回台風の目となった「土地増値税」は13年も前に施行された地方税の1つなのですが、地方政府によっては厳密に徴収しなかったり、税率を大幅に下げて開発を促進したり、という行為が散見されたため、今回、国家税務総局が「みんな規定通りにちゃんと徴収してくださいね」という意味で通知を発布したところ、想定外の大騒ぎになってしまった、とのことです。

こんなちょっとした勘違いがこれだけの大騒ぎに発展した背景には、昨年からの中央政府の不動産投資に対する引き締め政策があります。

中国の不動産投資は、ただでさえ高い経済成長率を大幅に超えて増加しており、明らかに「バブル」状態になっています。中央政府は転売規制や不動産増税で沈静化に努めているのですが、温州商人や山西省の石炭成金などから、値上がり狙いの投機資金がどんどん流入してきますので、昨年第四四半期からはかなり落ち着いてきたとは言うものの、依然として高い水準の伸びが続いており、新築マンションは完工前に全て売り切れる、という状態が続いています。

しかし、中央政府は今年も引き続き不動産投資に対して、引き締め策を打ち出していくことを明言していますので、中央政府が土地新税を公布するなど、ちょっとしたきっかけで、投機資金が一気に不動産から逃げ出してバブルがはじけ、中国の不動産が大暴落する可能性は大いにあります。

今回の国家税務総局の通知に対する市場の過剰反応は、中国の不動産業界が「理由なき反抗」のジェームス・ディーンのように、隣の人を見ながら崖に向かって全速力で車を走らせる「チキンレース」状態になっていることの証左なのです。

コラムニスト 柳田 洋 Yanagita
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最終更新日 2012-04-27

 

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