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第15話 早口は賢い!? (2008年04月28日)

 上海在住日本人の猫虎ファンの方からの情報。“先日、同僚の中国人がマナー研修に参加。その先生曰く「日本語はゆっくり丁寧に話すのがマナーです。一方、中国人の場合はゆっくり話すと聡明で無い、と云う印象を与えてしまいますよね」” これは面白い。すこぶる興味深いテーマである。直ぐに飛び付いた。私の仮説の1つを検証するネタになるかも知れないからだ。考えてみると中国語は確かに速い。特に相手を説き伏せようとする時の機関銃の様にまくし立てる話し方は、中国語の特徴の1つとも言える。私の上述の仮説は、“中国語は自然発生的ではなく、誰かが定めた人工的な言語である。その目的は伝達時間を短くするため” このお題はこれを検証する1つの手掛かりなってくれるかも。そう思うと俄然ワクワク。早速調査開始だ。

 ところが、いつもながらこの手の調査は困難を極める。何故なら答えがバラつくから。この中国人の多様性については、いつも感心してしまう。その差にちょっと苦しみながらも楽しみつつ、2~3分×50人のインタビューを無事終えた。その結果を下表に示す。注1)


 御覧の通り、「奇妙」や「のろま」の悪印象から「慎重」や「高貴」の好印象まで、幅広いと言うか正反対である。今回は予想を超えたバラツキに驚きだ。そして、冒頭のマナーの先生の「ゆっくり話すと聡明で無い」は第3位で44%、半分以下である。プロのマナーの先生が断言する程か? と私の脳裏に疑いがもたげ始めた10人目より、次の補足質問も投げかける事にした。「もし(将来の)自分の子供が早口だったら? 注2)」 こっちの質問に対しては、見事に皆同じで「良い。だって賢く見えるから」である。「特に気にしない」が2名いたが、ネガティブな答えは誰1人いなかった。

 さて、もしこれが日本人への問いだったら? 10名程しか確認しなかったが、答えは中国人とは全く逆である。「子供の早口?そりゃ注意しますよ。だって、そそっかしい、軽率、落ち着きが無い、軽い。。。」早口は日本では肩身が狭い。かくゆうこの老松らおそん、幼少時分より相当早口。先生、両親、親戚から、御近所のおじさんおばさんに至るまで、「もっとゆっくりしゃべらんとぉ!せわしない」と何度お叱りを受けた事か。幼少時代の嫌な気分がフラッシュバックした私であった。

 話を戻そう。中国語の最大の特徴は四声、この四声は3つの音程から成り、世界でも特異な言語である。ここから先は私の仮説となるが、3音程が自然発生的に生まれる筈は無い。3音程は意味を凝縮させ伝達速度を上げるための人工的な決め事なのでは。それを定めたのは中国古代の皇帝か。と、いにしえに思いを馳せつつ、現代の中国人の早口を思い起こしてみる。まぁ私にとってはちょっと贅沢な時間である。

 最後に、インタビューした中国人2名の意見を紹介し、筆を置く。「中国人は速くしゃべらないと自分が軽く見られる感じ。速過ぎて相手が解らなかった時は2度喋る」 もう1人「うちの息子は、口ごもると主人から注意されてます。“さぁもう1回、速く喋って。ダメだ。もう1回だ” そうやって、いつも速く喋る練習をさせられていますよ」

  • 補足)時代と共に話すスピードは速くなってきている。これは世界共通であり、別途研究中。

  • 注1)上海在住の大学卒の20~30代の男女50人へのヒアリング結果である。地域、年齢、学歴が近いのにも関わらず、これだけバラついている。

  • 注2)周りの人は理解出来る程度の早口である、と条件は付けている。

  • 謝辞)執筆に当たり、インタビューに御協力戴いたHikari高井,Kei任,趙麗華,中国語学校 漢院の教師の方々、そしてOKI日沖半導体(上海)有限公司のstaffの皆さん、ありがとうございました。また、いつもながら質の高い中文翻訳を提供してくれるyunyun朱,Rainy李に深謝します。さらに、今回のテーマ設定に貢献戴きましたminamon、ありがとうございました。(敬称略)

  • 注意)『老松の猫虎飯店』の著作権は、全て松原弘明に帰属します。無断転載を堅く禁じます。

  • PR)『筆者がパーソナリティを務めるnet Radio公開中。 「中国人の声は何故デカい?」



コラムニスト 松原弘明 Right
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最終更新日 2011-08-20

 

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