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第22話 畳語 Kawayi~ (2008年12月01日)
ランラン・カンカンと言うと、中日国交正常化で中国から贈られた上野動物園の初代パンダ。リンリン・ランランと言うと、70年代の日本歌謡界で活躍した香港出身の双子姉妹アイドル歌手。注1) 今の若者には分からないだろうが、老松(らおそん)の世代ではほぼ全員が即答できる。と、こんなことを披露しても、歳がバレるだけで何も良い事は無い。
さて、ランラン、カンカン、リンリン等、同じ単語を重ねたものを畳語(じょうご)と言うが、この畳語を使った名前、中国人は大好きである。特に、子供や若い女の子向けには、ニックネームとして頻繁に使われる。また、恋人同士の甘ぁ~い関係では、お互いを蘭蘭、康康 注2) 等と呼び合うカップルも少なくない。何故か? そんな事を考えるのは変だと自分でも思うが、音に興味を感じてしまう老松だから仕方無い。結論から言うと、言葉を重ねる幼児語の語感が可愛い感じを醸し出し、甘美なスパイス効果を発揮するのであろう。幼児語の言葉の重なりは、程度の差こそあれ、それは世界共通である。例えば、子供が車を指して「ブーブー」は文字通り車の音に起因し、中国語も韓国語も日本語も同一である。犬の「ワンワン」も然り。英語では畳語は多用されないものの、パパ、ママはその類いに入る。 名前以外にも、最近の女の子達の会話では畳語が多用され始めている。例えば、好看(hao kan){素敵,カッコいい}の代わりに好好看(hao hao kan)、東西(dong xi){物}の代わりに東東(dong dong)と、言葉の重ねで可愛らしさを演出している。これは台湾や香港からの影響であり、大陸では港台訛りとも呼ばれている。何と、国家広電総局(メディアの統制機関)は、TVやラジオのアナウンサー向けにこの様な話し方を禁止した法令を2005年に通達している。しかし、その効果が出ているのかいないのか、一般人に港台訛りは浸透中。何故か? その根幹には日本発信のかわいぃ文化があるのではないか、と仮説を立てている。欧米では、かわいぃと言う発音そのものがkawaiiとなって、そのまま英語やフランス語やロシア語等の外来語に転じている。中国語では、日本語の可愛いの語源である中国語の本家本元の可愛(ke ai){可愛い,愛すべき}があるのであるが、当て字で新語の卡哇依(kawayi)が既に市民権を得ている。その証拠に、卡哇依を検索エンジンでたたいてみると108万件にも。当然の如く、可愛(ke ai)の8,290万件には遠く及ばないが、△△卡哇依有限公司 と云った会社名さえもヒットする程だ。古代中国で発明された漢字が海を渡り日本へ、時を経て、可愛いが台湾や香港で卡哇依へと転じ、それが大陸に逆輸入されたのである。正に言葉は文化。お互い影響を与え合う生き物である。 最後に、周囲の20~30代の若者達へのインタビュー結果である。注3) 今回の結果は、当然ながら男女差が大きい。
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コラムニスト | 松原弘明 |
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最終更新日 | 2011-08-20 |